かながわ百景[35]

蘆花も愛でた田越川。朱塗りの橋に鯉も赤くなる(逗子市)

舟を浮べて、御最後川を遡る。
日落ちて、残照水にあり。山には蝉の音蜩の音猶流れぬ。

舟は暮色と共に次第に川を遡る。夕潮満々と湛へて、青蘆の洲も半水にあり。舟行く方は、山影碧く水に臥し、時々鯔あり、高く跳ねて白き紋を畫く。

日暮れて、水白く、両岸黒し。鈴虫、松虫、きりぎりす、水を挟みて鳴き、山の闇きには、梟咽を鳴らす。空に五位鷺の聲あり。
(湘南随筆 徳富蘆花著 岩波文庫「自然と人生」から) 


徳富蘆花が見た明治30年頃の逗子である。御最後川というのは田越川のこと。京急新逗子駅の脇に田越川は流れ、そこに架かる橋が逗子橋、そして相模湾までに清水橋、仲町橋、田越橋、渚橋とある。小坪の山を背景に曲がり流れ、そして架かる橋の違いを眺めながら散歩するのも楽しい。
写真は朱塗りの仲町橋、泳ぐ鯉が赤く染まった。

O/2009.02