
『私の好きな谷は、覚園寺−かくおんじ−のある谷である。大塔宮(鎌倉)の左側のこの谷は薬師堂谷−やくしどうやつ−とよばれているが、その名前のように、この寺は、北条義時の作った薬師堂に起源を持つ。』と書くのは永井路子さん(「歴史のねむる里へ」PHP研究所発行から)。
谷は「たに」といわずに「やつ」とか「やと」と呼ぶ。鎌倉特有の呼び名である。永井さんが好きだという谷を歩いた。水の流れ、谷の静かな空間。ゆるやかな上りの楽しい。覚園寺が見えた。
『緑の中の静謐――覚園寺はそんなよび名がふさわしい。杉木立と竹林の緑のハーモニー。その茂みをくぐって射しこむ木洩れ日にビロードのような苔が息づく。』
鎌倉の苔寺ともいうそうだ。門の足元は大きな円形の敷石。これもまたいい。
O/2010.03