[葛西紀巳子の暮らし色いろ] 第1回

アメニティと色彩

アメニティは「愛」と「生命」を機軸とした本質的な快適性

アメニティ」という言葉をご存知ですか?すでに耳馴染んだ言葉かもしれません。そう、「快適性」「心地よさ」のこと。近頃、また耳にするようになりましたが、もっとも頻繁に使われたのが1980年後半のバブル全盛の頃です。当時は、ボタン1つで開閉する扉や窓、カーテン、大理石のジャグジーバスなど“便利で機能的で効率的で物質的に豊かなこと”を強調して「快適だ」と言ったのです。もっとも、その言葉はバブル崩壊とともに一緒にすっ飛んでしまったきらいがありますが。

 けれど、アメニティの語源はラテン語の「アマーレ」“愛”です。根底には、人に対する思いやりや優しさが内在していることを忘れてはなりません。また実践活動は、18世紀末から19世紀にかけてのイギリスの産業革命下に端を発します。当時の急速な工業化は、大気汚染や水質汚濁を悪化させる要因となり、人命に多大な犠牲を強いることになりました。人々はその汚れた水を飲み伝染病を患い、スピード化はストレスや過労を伴い、死に至らしめることも多くあったようです。そこで市民の中から沸き起こったのが公衆衛生の改善化。それがアメニティ活動の発端となりました。

ですから、アメニティは単なる快適性ではなく、「愛」と「生命」を機軸とした本質的な快適性であることを改めて認識しておきたいのです。私がただのカラープランナーではなく“アメニティ&カラープランナー”と名乗るのも、そこに意味があります。それは、単に美しいこと、便利で機能的なだけの色彩計画ではなく、思いやりや真の優しさから求められる美と調和、歴史や風土、そして人間の心理や生理を踏まえて、人々が生き生きと暮らせる環境づくりを、色彩の面からも設計していきたいと思ったからです。

そして最近、再び「アメニティ」の言葉が見られるようになったのも、そうした心の豊かさ、安らぎ、ゆとりといった本来のアメニティが求められてのことでしょう。

こうしたアメニティ豊かな住まいの色彩を、これからみなさんにご紹介していきたいと思います。お楽しみに!

葛西紀巳子プロフィール

[かさい・きみこ] (有)色彩環境計画室代表/アメニティ&カラープランナー。
心理学専攻後インテリアデザイン、色彩、照明を学ぶ。嶋佐知子氏に師事しインテリアデザインを、ジェリィ・フォリー氏からはカラーデザイン学を学び,1993年独立。1994年(有)色彩環境計画室を設立。住宅、病院、施設、ホテルなどの「快適な環境づくり(内外装)」を心理的+生理的+機能的+美的な視点から理論的、総合的に色彩設計していく。他方、専門家や学校教育における「まちの環境色彩教育」の必要性を提唱・実践中。
色彩環境計画室 http://www.sikisai.co.jp

 

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