高齢社会になって、設備や備品もお年寄りに使いやすいものが出ています。それらを、おしゃれにセンスよく、効果的にしつらえるにはどのようにしたら良いでしょうか。そこで今回は、手すりと壁面の色の工夫について考えてみたいと思います。
手すりは、握り具合や取り付ける高さなどはもちろんですが、壁面のどちら側につけるか、どういうものを選ぶか、などを慎重に確認することが必要です。特に、手すりの端部は、壁面側に折り曲げて処理することも忘れてはなりません(写真1)。先端を棒状のまま取り付けてしまいますと、袖口の広い衣類やバッグの紐をそこにひっかけたりして、転倒事故につながる危険性があるからです。
手すりの位置を明確にわからせるには、壁面と手すりの色にコントラストをつけることが必要です。写真2のように、壁面と手すりを同じ色にしてしまうと、手すりそのものがわかりにくくなってしまうので、心理的に不安感を伴います。ですからこの場合は、手すりの端部にその位置と危険性を示すため、後から黄色く塗装を施しています。一方、同じアパートの階段室でも、写真3のように、壁面と手すりに色のコントラストをつけた場合は、黄色のペンキは塗られていません。手すり部分がはっきりと認識できるからです。
さらに、これらの写真のように、腰壁まで色を変えるのも高齢者には好ましいことです。同じような手法として、腰高まで木板を貼って異なる素材で施工することも多く見られますが、これは住まいに風格と質感がでてくるだけでなく、身体に近いところで視線の位置が定まるので、高齢者はその水平ラインをガイドにして、不安定になった身体をグラつかせることなく移動するのに効果があります。
そのように考えていくと、たとえ腰高まで色の切り替えや腰板などで素材を変えなくても、床と水平に設置された手すりを、壁面とコントラストをつけた色や素材で、存在感を際立たせば、同じような効果があるともいえそうです。歩行用の手すりは、バーを握るのではなく、体を支える補助として存在するからです。


[かさい・きみこ] (有)色彩環境計画室代表/アメニティ&カラープランナー。
心理学専攻後インテリアデザイン、色彩、照明を学ぶ。嶋佐知子氏に師事しインテリアデザインを、ジェリィ・フォリー氏からはカラーデザイン学を学び,1993年独立。1994年(有)色彩環境計画室を設立。住宅、病院、施設、ホテルなどの「快適な環境づくり(内外装)」を心理的+生理的+機能的+美的な視点から理論的、総合的に色彩設計していく。他方、専門家や学校教育における「まちの環境色彩教育」の必要性を提唱・実践中。
色彩環境計画室 http://www.sikisai.co.jp