[新・快適生活図鑑] 第6回(2006年9月掲載)

人間性を尊重した老人室のリフォーム

 

音を楽しむ趣味と静けさのなかで楽しむ趣味

誰しも歳をとれば、疲れやすくなり部屋に閉じこもりがちになるのは当然なのかもしれません。しかしいたわり過ぎの上げ膳据え膳では、老人の主体性を奪い、生きる活力をなくさせてしまいかねません。
老人室は、老人ができる限り自立し、自分のペースを保ちながら、たやすく若い世代と自由に交流できる空間を設計すべきかと思います。

今回の老人室のリフォームは、息子夫婦から、昨年夫を亡くし、部屋に閉じこもりがちになった母に、以前のように明るく活動的に生きてほしいということでリフォーム依頼があったものです。

リフォーム前 (図-1 before)

・15年前の新築時には、65歳と60歳で夫婦とも健康であったので、親夫婦のプライバシーを尊重するために、東南の角に離れのように老人室を作った。

・ 2人の布団を敷いても余裕が残るように8畳の和室にし、お茶を入れたり、軽い食事程度はできるようにミニキッチンを設け、小型の冷蔵庫と食器棚を置いた。

・便所は、和室から直接では美意識に合わないとのことで、部屋を出たすぐ脇に設けた。

リフォーム後 (図-2 aftere)

・8畳間は、1人では少し広く、取り残された感じがするのかもしれない、ということで6畳間にした。

・和室を狭くした2畳と便所・ミニキッチンのあったスペースを、便器と大きなミラーの洗面化粧台の付いたシャワールームと、軽い食事を取れる食器棚を置いたキッチンスペースにした。

・ 部屋の出入り口以外にこのキッチンスペースにも廊下への出入り口を設け、共有スペースに出やすくした。

・共有スペースのリビングの北東の角にも出入り口を設け、部屋から出易くなった母親が、たやすくリビングに出入りできるようにした。

 リフォーム後、母親は日に何回となくリビングに顔を出すようになった。また気兼ね

なくいつでも自由に使える、大きなミラーの付いた洗面化粧台とシャワーがあることで、

身なりにもまめに気を使うようになり、小奇麗な格好をして外出する機会も増えた。

そして自分の好きなものを買ってきて料理しては、息子の家族の食卓に提供することも

多くなり、とてもいい関係で共棲ができるようになった。

 このように、住む人の人間性を考えてリフォームすることで、生きる活力や生活の活

性化も生まれてくるのです。

 

図ビフォーアフター

 

児島 敬子プロフィール

[こじま・けいこ] デザイナー・建築家。
1983年にトータル・ライフコーディネートスタジオ「ZAZA」を開設。1988年、ヒューマンスケールで考える住環境設計を加え、インテリア建築デザイン事務所「ZAZA―YOU、CO」を設立。家が「ゆったりと豊かな時を過ごせる心のすみか」となれるスペース作りを目指し活動を続けている。著書に「インテリア製図の描き方」など。

 

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