[工務店とリフォーム] 第8回(2006年11月掲載)

耐震改修のハードルを低くして安全なまちづくりを

誰にとっても“地震は怖い”存在ですが、むやみに怖がってばかりいてもしかたがありません。“備えあれば憂いなし”ということで地震対策が肝心です。新築にあたって耐震性能を重視する人が多いのはうなずけます。しかし、すでに建っている既存住宅については、不安を感じつつも積極的に耐震改修に踏み切る人が少ないように思われます。

 「倒れたときは、その時だ!」「ウチだけは運が味方してくれるだろう」と、投げやり気分の人もいるのではないでしょうか。それには、現在の建築基準法にも原因の一端があります。


それは、既存建築物が法令の規定に不適合になった場合、その建築物が増改築する時に、耐震性や防火性などの性能を確保することにしているからです。

したがって、地震が来たら危険な建物であっても、所有者が増改築しなければ、そのまま放置されたままです。法的には、著しく保安上危険な建物に必要な措置を施すよう命ずることができますが、この命令が発動されることはほとんどありません。

危険な既存建築物を容認する一方で、増改築しようとした場合、建築物全体について現行の建築基準法に照らした改修が求められます。

たとえば、地震に備えて耐震改修を検討していても、その部分の工事だけでは済まされず、避難路を確保しなさいなど、他の不適合部分も同時に改修しなければなりません。そうなると、所有者の費用負担も大きくなり、改修を断念したり、先送りにするケースが出てくるというわけです。


取りあえず、地震で倒れないようにしておきたいと思っても、それを機にあれもこれも直さなければ建築許可が下りないとなれば、躊躇することになるでしょう。特に、所有者に直接被害が及ばないであろう賃貸住宅に、その傾向が強くなることは容易にうなずけます。

このへんの建築基準法の見直しを、われわれ工務店もいっしょになって考える必要があるのではないでしょうか。耐震改修のハードルが低くなり、耐震改修に踏み切る人が増えれば、安全なまちづくりにも寄与することになります。


現在、わが国の住宅ストック数は約5,000万戸、そのうち約3割の1,400万戸が新耐震基準を満たしていない住宅です。早急に何とかしなければなりません。いつ来てもおかしくない東海地震や首都直下型地震に襲われてから、対応したのでは遅いのです。 

松下 寛光プロフィール

[まつした・ひろみつ] 住宅アナリスト 1948年札幌生まれ。住宅産業新聞編集長を経て1993年独立、住宅から森林、環境問題まで幅広いジャンルで評論活動を展開している。プロデュース会社(有)インパルス代表取締役。
インパルス・ハウジング・ネット http://www.impulse.co.jp

 

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