[リフォームあたふた記] 第5回

シロアリ騒動

見積もり価格を聞いて家族会議は荒れ模様!

●建物健康診断の結果を見る

床下探検を終えてH調査員は「建物健康診断書」を書いて渡してくれた。

建物の建築年数、面積、基礎の造り(コンクリート・石・煉瓦・その他)、基礎の高さ、床の高さなど建物の概要欄があって、その次に「環境条件」という欄があった。

土質 砂質・粘土質

水はけ 良・普通・不良

床下湿気 乾・普通・湿

通風 床下 良・普通・不良

通風 建物 良・普通・不良

赤字がO氏の家に付けられていたチェックマーク。環境条件は良くはない、普通でもなく不良が多い。若いころ俺は不良だった、息子も不良、床下も不良だった、わかるかなーと一人ぶつくさとつぶやくO氏。つぶやいて笑ってはいるが、不良の文字を見てショックだったようだ。

本当はO氏、不良だったこともない、そんな勇気はなかった。息子も不良ではない、普通だった。成績も普通だった。そう、O氏一家はみんなが普通、平凡な人生だった。これまでずっーと普通で生きてきたのに、不良、不良と書かれると、フラッとくる。O氏は不良に弱かった。免疫性がなかった。

腐朽 有

蟻害 有

シリアリの種類 ヤマトシロアリ

そして「被害部の状況」が書かれてあった。

浴室 土台 進行度 中

和室 土台 進行度 小

蟻害を受ける危険度 大

大した被害ではないとH調査員は語っていたが、こうして危険度大などと書かれると、ウーンと考えてしまう。心は大きく揺れる。テストを返された小学生のころを思い浮かべるO氏であった。

診断書の最後にこんな所見が書かれてあった。

(1)シリアリの道がある

(2)シロアリ被害あり(羽アリの発生)

(3)害虫類生息

(4)風の流れが悪い

(5)湿度強い

(6)風の流れをよくすること。土壌の改善必要

●見積もり価格、約100万円

昼過ぎ、H調査員は「もう一軒、行くところがあるんです」と言って帰っていった。一枚の見積書を置いて……。

その夜、O氏宅では遅くまで家族会議が開かれていた。

「では発表します。驚かないでください。目を丸くしないでください。腰を抜かさないでください。みんな年なんですから。医者にかかると金もかかります」

とO氏は説明をする。またかよという顔のO氏の息子。うんざりする家族。

 シリアリ防除   28.8坪×単価10,500円 303,187円

 シロアリ巣の根絶 40.95?×単価4,725円  193,488円

 竹炭       26坪×単価20,400円  530,400円

  計                  1,027,075円

オーという声があがった。100万かよとO氏の息子が言い、「俺、大学入試なんだけど」と小さな声でつぶやく。すると、O氏が「入試とシリアリにどんな関係がある」と怒鳴った。荒れ模様の家族会議だった。星は出ていても家の中は嵐、O邸いつもの光景である。怒鳴って失敗したなと思ったのか、O氏はすぐさま「あっ、入試もシロアリも共に入り込むのか。ハハハハ」とごまかした。誰も笑わなかった。

「入り込むとはなんだ。裏から入るみたいな言い方じゃないか。それにシロアリと一緒にするな」

 白いご飯が飛んできた。O氏はじっと米粒を眺めた。シロアリにみえてきた。

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http://www.tcat.ne.jp/~yajiuma

 

バックナンバー