有名人のことばに学ぶ住まい学 [その4]

猫の「病院」と「監獄」と大佛次郎氏

●鞍馬天狗の作者の大佛次郎氏は猫好きだった

『私はテレビで電気大工道具の広告を見て、あいつを欲しいなと、いつも思う。しかし、あいつを買ったら、机や板の間にむやみに穴をあけたり、所きらわず柱を削りたくなって困るだろうときがついて、買わないでいる。』(大佛次郎「ある白書/「猫のいる日々」所収、徳間文庫」
大佛次郎氏(小説家。「鞍馬天狗」シリーズが有名。「帰郷」「天皇の世紀」などの作品がある。ペンネームは鎌倉長谷の大仏の裏手に住んでいたことに由来。1897〜1973)は、なんで電動工具を買いたいと思ったのかというと、猫のため。『私の家に住んだ猫の数は五百匹に余る』という猫好きだったようです。

●猫の病院と監獄を作ろうかと考えたことも…

では、電動工具を使い猫のために何をつくろうかと考えていたのでしょう。それは病院と監獄。
『猫のための監獄と病院を、庭の一隅に建てることであった。けさも腹を悪くして、座敷中、よごして歩いた子猫がいた。こいつを、収容する病室が庭にあると、本や畳を汚されずに済むし、治療のため、他の猫の皿に首を入れぬよう隔離して絶食療法を施すこともできる。病室の設計は床の全部に砂を入れた便所にして、二階に日光浴できる寝ぐらを作ってやる。監獄の方は、もちろん悪いことをした猫を刑期をきめて謹慎させるためである。文化国の刑務所だから散歩場も作ってやる。食事もやる。怠け者で言いつけても働かない猫に懲役を宣告しても無意味だろう。窃盗罪も飼っている人間の不注意から起こることだから、見のがしてやる。その代り小暴力でほかの猫をいじめ、立ち小便をしたやつは禁固を命じるのである。ビールや葡萄酒の木箱をこわして、組立て、格子をはめれば、りっぱな刑務所が建つ。そのためには、私に時間とひまと、テレビで見る電気大工工具が欲しい。』

ちょっと長く引用してしまいましたが、おかしくてたのしくて、みんなにも読んでもらおうと引き写しました。

●猫のためとはいえ家の安全性を無視してはいけない

猫好きな人は大佛氏のようにあれこれ猫のために夢を描いているのではないでしょうか。でも、猫の潜り穴をつくろうかと考えて、家の安全性を考えずに壁に大きな穴をあけたり、柱を切ったりしないように。ご注意、ご注意!

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http://www.tcat.ne.jp/~yajiuma

 

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