作家の五木寛之氏(1932年福岡県生まれ。「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞受賞。「青春の紋」「風に吹かれて」「大河の一滴」など。)のエッセイに、くしゃみについて触れたものがあります。「こころの天気図」(講談社文庫)の中の「膝を屈すること」という短い文章です。
『喫茶店で雑談をしていた相手が、急に中腰になって、テーブルの端を両手でわし掴みにしたので驚いた。見ると顔が引きつっている。発作でもおこしたのかと気遣うまもなく、ハックション!と大きなくしゃみをした。』
くしゃみを我慢しようとすると、五木氏が述べるように発作を起こしたように震えます。そんな経験した方も多いでしょう。
でも五木氏と話をしていた相手が中腰になり、テーブルの端を掴んでいたのはどうしてかといえば、ギックリ腰の対処のため。五木氏は続けてこう書きます。
『そこでくしゃみが出そうになると、急遽、近くの手すりや椅子の背などにつかまって中腰の姿勢をとるのだという。』
ギックリ腰をやった人には、くしゃみの恐さがわかるというもの。たかが「くしゃみ」ではないのです。
『ヒントは「膝は曲げるためにある」という古人の言葉である。腰は折るが、曲げない。膝はできるだけ深く屈する。魔女の一撃も、日常の困難も、膝を屈してやりすごすしかないのだ。』と五木氏は膝を屈することがギックリ腰にならないためには大事だといいます。欧米ではギックり腰のことを魔女の一撃と言いますが、一撃を喰わないためにも、中腰になったり、何かにつかまることがいいようです。
風邪を引いてくしゃみ、花粉症でくしゃみ、アレルギーでくしゃみ、誰かの噂話で突然、ハクション――くしゃみをすることは多いんです。でも油断すると腰痛に。恐い。
くしゃみ防止のためにも家の中に花粉を持ち込ませないようにしたいものです。また、光くしゃみ反射といって、晴れた日に室内から外に出たときにくしゃみが出ることがあります。室内の明かりでもくしゃみはでます。気をつけなきゃいけません。
家の中では廊下が恐いですね。突然、ハクション。でも何もつかまるところがなくで、ギクッとやってしまったという人もいるのではないでしょうか。バリアフリーのためといわれる室内の手すりはギックリ腰対策のためにも役立つといえるようです。

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma