有名人のことばに学ぶ住まい学 [その7]

「モノの整理」と「収納」と犬養道子さん

●整理のためにゃ棄てねばならん!

『ああ畜生! 何とえらいこった。整理ということは! 整理のためにゃ棄てねばならん、棄てるためにはきめねばならん、きめるためには頭と意志がいる。しかし頭と意志はそうかんたんには動いてくれないて!』(犬養道子著、「整理の整理」から/「女が外に出るとき」所収 中公文庫)
この本は、アメリカ、スペイン、フランス、ドイツなどで暮らした犬養道子さん(評論家、「お嬢さん放浪記」、「花々と星々と」など。1921年〜)が1972年、51歳のときにまとめたエッセイ集で、日本の外から眺めた暮らし論です。 
引用した部分は犬養さんがオランダにいたときに、フランスのお嬢さんが話したというもので、お百姓さんが、新しいじゃがいもと古いじゃがいもを整理して倉に入れようかというとき、捨てるか捨てまいかと悩むというものです。
服や本、子どものおもちゃなどをどうするかと、同じように悩む人もおおいのではないでしょうか。そこで、大きな収納とか、もう1部屋とかリフォームを考えたり……。
犬養さんも、書類、雑誌、新聞、書籍がどんどんたまって、『今までの棚や書架では間にあわぬ。物置を改造して、あまったものを押し込む。』、さらに、『「よいページ」だけを切りぬいてスクラップする作業をする。』、それでもまた書架がいっぱいになって、『書庫をたてねばなるまい』と、悩む。
ものというのは、どんどん膨れて増えていってしまうのです。

●生活のほんとうの整理とは、個人と自治体が動いてはじめて可能になる

日本人より欧米人のほうが整理が上手だと犬養さん。それも理由があるといいます。
『アメリカでは、「新品同様古着」を、安く買える店があちこちにある。学生時代、私はだいぶこのお世話になった。つまり、衣服の交換ルールがたくさんある。交換ルートは整理になくてはならない。
 そんなこんなの理由で、外人の家には「使いもしないでとってある」ものが極めて少く、「いいものだけ」が「あるべき場所に」おさまっている。』
 共同で使えるものは買わない、ということで洗濯機も家には置かない。その分、家はすっきりするといいます。
 こうした社会的な生活ルールの違いが、家の中の整理上手か下手の差としてあるというのです。
『生活のほんとうの整理とは、個人と社会と、いいかえれば、ひとりの市民とそして市民の集積である自治体とが、相ともに動いてはじめて可能になるのである。』
たしかに、狭い日本の家ですから、社会が手助けしてくれたら、もう少し空間を有効に使えます。収納の問題は自分の家だけで考えずに、もう少し広く社会的なことも含めて考えていくと、ピカッとひらめき解決できるものも生まれるかもしれません。

●しつけは、「家の中の整理」の一大要素である

もう1つ、犬養さんのエッセイで参考になるのが、子どもしつけと整理の問題。
西欧家庭では子供たちは、帰宅したら汚れたハンカチや靴下を洗濯かごに自分で入れる、食べ終わった皿は自分で洗う、と犬養さん。
『外人家庭が片づいているもう一つの理由は、男の子も女の子も、よちよち歩きのときからすでに、「自分の領域の自分の始末」の訓練が身についているからではあるまいか。』
そしてこういいます。
『しつけはやはり、「家の中の整理」の一大要素である。自由と規律の調和のとれたところには、野放図は生まれない。』
子どものときから整理の習慣を。これ大事です。

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma

 

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