有名人のことばに学ぶ住まい学 [その10]

佐藤愛子さんと「金のたまる家相」と「快適な家」

イメージ画像●佐藤愛子さんの家づくり失敗談

小説家の佐藤愛子さん(1923年生まれ、小説家・佐藤紅緑の娘、詩人・サトウハチロウの妹、「戦いすんで日が暮れて」で直木賞受賞)は家づくりの奮闘でこんなことを書いています。
『どうもこの頃の建築家は外観ばかり気を取られすぎるきらいがあるのではないだろうか。外観上かんばしくないという理由で、私の家の建築家は階段のおどり場に窓をつけてくれなかった。私は元来、陰気なことが嫌いなたちだが、殊−こと−に暗い階段というのは我慢−がまん−できない。窓の代わりにおどり場の壁に飾り電灯がついているのはいいが、それが滅法−めっぽう−高いところにあるので、電球が切れるたびに、おどり場へテーブルを運び、その上に夫が立ちその肩の上に私が乗って、電球を取り替えねばならぬのである。この年になって何の因果でサーカスの真似−まね−ごとをしなければならないのか。これもひとえに建築家の気どった趣味のためである。』滅−ほろ−び行く人間」/「こんな考え方もある」所収、角川文庫から)

この文章から、リフォームするときには、
1に建築家にご用心(いい建築家もいる!)、
2に外観ばかりの気をとられずに、
3に奇をてらったデザインは避ける、
4に開口部は十分に考えて、
といったことを考えさせてくれます。

●この家の家相は金がたまる家相でっせ

家相についても書いています。佐藤さんが子供の頃の家は3階建てだったようですが、『大きくて暗くて、やたら間数があった。』と書いています。
『日当たりが悪いので冬は寒く、夏は風が通らない。ある人が来て、
「この家の家相は金がたまる家相でっせ」
といって母を喜ばせていたが、実際に金がたまったのかどうか私にはわからない。』
(「泣き笑い私の住宅記」/「こんな考え方もある」所収)
その後、新しく建てた家に移ります。今度は思いっきり明るい家で、風通しよし、どの部屋も明るい光に溢れていたようです。ところが……。
『「今度の家は金はたまりまへんで」
と前の人が来ていった。
「皆、流れ出てしまうように出来てます」』
明るくて風通しのよい快適そうな家であるが、家相では金がたまらないというのだから、これはたいへん。
佐藤さんはそう言われて、こんな感想を書く。
『居心地よく作られた風通しのよい明るい家はいうならば贅沢−ぜいたく−に気ままに建てられた家である。そういう家に住んでいると自然、生活が開放的になり出費も多くなる。今度の家は金はたまらぬという意見は、そういう意味で理にかなっているのかもしれなかった。』
ウーン、快適さ=出費の多くなる家、というのはなんとなくわかるなー。オール電化も電気も使うし、確かに出費は多くなる。
金がたまる、たまらないということは置いておくとして、毎月の出費は誰もが気になるところ。リフォームするときは、快適で出費を抑える工夫をしているかどうかを考えたいもの。
「この家は快適で金もたまる家相でっせ」
といわれたいもの。

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma

 

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