吉本隆明さんというと作家の「よしもとばなな」さんの父親、詩人、文芸批評家、思想家として知られており、文芸から政治、経済、宗教など広範囲な領域で評論活動を展開しています。“匂い”についても興味をしめし、いま私が手にしているのが「匂いを讀む」(光茫社発行)という本。
『匂いの本性には、まだわからないところがたくさんある。そのわからなさを三つにわけてみよう。ひとつは匂いをはなつ物質にまつわるわからなさ。もうひとつは匂いが鳥や魚や動物や人間のような生きものにとどけられるわからなさ。最後のひとつは、とどけられた匂いのもとを、匂いと感じる生きものの嗅覚器官がいい匂いとか嫌な匂いとかに振りわけるメカニズムのわからなさ。』
そんな匂いの不思議発見を試みた本ですが、「現代における匂いとは何か」という香水評論家の平田幸子さんとの対談ではこんなことを語っています。ちょっと長いですが引用させていただきます。
『京都の宿の女主人で、ちょっと喘息ぎみのひとがいます。匂いに対してものすごく敏感ですね。病的とおもえるほど敏感だけれど、自分ではそう思っていないと思うんです。僕らなんか、「何か臭いよ」と言われるんです。そちらが過敏なんだと言うことにしています。たしかに、そういうことは病院なんかではないと嘘だなという気はするんですね。こっちからすると、病的におもえるほどです。
ひどい人になると、たとえば、玄関に人が訪ねて来て戸を開けると、その人の家では猫を飼っているということがすぐわかるほどだそうです。喘息の人はほんとに匂いに敏感ですね。…奥のほうにいても、玄関にそういう人が来て、猫とか、動物を飼っているというのがすぐにわかっちゃうというんですね。』
もともと匂いに敏感な人がいますが、喘息とかアトピーとか病気がちな人も匂いに敏感なんですね。そんな匂いに敏感な人にとって、家の中が嫌な匂いだったら……。たいへんです。
吉本さんは『春とか、秋とか、季節の不安定な時が一番敏感になる』と言っています。梅雨時は匂いに敏感でない人も気になる季節。洗濯物を部屋に干して匂いに悩まされたり、カビ臭さがイヤだという人も。
洗濯物を部屋に干すと室内の湿度が高くなって匂いを放つ物質が動き回るよう。そこで換気をよくして空気の流れをつくって、湿気を追い出すことが大事といいます。
また、匂いの発生源を隔離・分離する工夫も必要なようです。洗濯機を置く場所を湿気の少ないところにしたり、洗濯物専用の干す場をつくったり、換気ができる浴室内に干したりしてもいい。
靴も嫌な匂いの発生源です。靴は玄関と結びつきますが、玄関=靴置き場、と考えずに、こちらも隔離・分離することも考えていいのです。靴は玄関の隣の靴置き場にして、湿気対策・換気対策をして、嫌な匂いを追放するのです。
嫌な匂いは隔離・分離する。しかし、いい匂いはどんどん取り入れて。そんな匂いのリフォームも考えたいものです。

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma