有名人のことばに学ぶ住まい学 [その15]

山本一力さんと「家族力」と「ダイニングテーブル」と

●ちゃぶ台は家庭の規範を軽んずる者に仕置(しおき)をする道具

イメージ画像「あかね空」で直木賞を受賞した作家の山本一力さん(昭和23年生まれ)、「損料屋喜八郎始末控え」「だいこん」などの作品のほかに、エッセイ集として「家族力」(文春文庫)があります。“人気時代小説家が語る告白的家族論”と宣伝文句、あたたかな家族絆を山本さんは語ります。
山本さんは、ちゃぶ台を語ります。子どもの頃、家族で食事をしたり勉強机にもしたあのちゃぶ台です。
『親父はタンスを背にして座り、向かって左側が母親の定位置だ。あとは長兄から順に時計回りに座り、みそっかすの末っ子は土間を背にするのが定めである。』
『ちゃぶ台は、家庭の規範を軽んずる者に仕置(しおき)をする道具でもあった。かくして長幼の序は保たれた。ちゃぶ台効果は、どの家にも浸透していたのである。』
“家庭の規範を軽んずる者に仕置(しおき)をする道具”というは説明をしないとわからないでしょうが、親の言うことを素直に聞かなかったり、単に父親の機嫌が悪いときにちゃぶ台をひっくり返すことを指しています。それで親父の威厳を保っていたというわけです。

●「大きなテーブルに椅子(いす)の暮らしだと、お互いの距離が離れてしまう」

時代は変わり、世の中は豊かになっていきました。部屋の中には小さなちゃぶ台からダイニングテーブルが入ってきました。このダイニングテーブルを山本さんは語ります。
『私はダイニングテーブルがえらそうに座を占めるころから、父親の威厳が色あせてきたと確信している。』
『小さなちゃぶ台と狭い部屋の暮らしであれば、いやでも家族は膝(ひざ)を寄せ合わさざるを得ない。が、大きなテーブルに椅子(いす)の暮らしだと、お互いの距離が離れてしまう。』
『しかも食事どきに親父がいるのがまれとあっては、存在感が薄くなるのも当然だ。父親の椅子は隅へと追いやられ、テーブルの真ん中には、こどもが堂々と座り出した。』
長幼の序を重んじる山本さんには腹立たしい時代になったのかもしれない。

●大きくではなく小さくまとめて家族との距離を縮めていくリフォームの時代

でも家族のコミュニケーションを考えるとき、山本さんのこの意見は大事です。リフォームというと、部屋を大きくしようとか、広くしようと考えますが、反対に少し狭くしてみるのもいいかもしれません。
広いリビング、ダイニングだから家族は右へ左へと位置を占めます。ところが狭くなれば、キュッと集まります。縮まればコミュニケーションもとれます。
ちゃぶ台の代わりに、丸いダイニングテーブルを置いてもいいかもしれません。千葉県のAさんは中華料理店のあるような丸テーブルを購入し、家族みんなで食事。拝見したことがありますが、なかなかいい光景でした。この丸いテーブルもキュッと縮みの道具です。
これからは、大きくする発想ではなく、小さくまとめて家族との距離を縮めていく、“縮み志向のリフォーム”の時代です。

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp/~yajiuma

 

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