有名人のことばに学ぶ住まい学 [その29]

「奇想天外な発想」と「住まい」と真鍋博さん

「ぼくの家庭革命」表紙「ぼくの家庭革命 マイ・ホームは進化する」から

真鍋博さん(1932〜2000)――星新一氏、筒井康隆氏らのSF小説の挿絵や未来画を得意としたイラストレーター、奇想天外な発明を描いた「超発明」「有人島」などの作品賀あります。さらに文明批評関連のエッセイ集も多数。

「ぼくの家庭革命 マイ・ホームは進化する」(文芸春秋)は未来を見つめた住まいのエッセイ集です。40年前の1971年11月に発行されていますが、未来を先取りした真鍋さん、その住宅論も古くはなっていません。

「台所は広くなればなるほど、……時間もかかるし、体も疲れるのである」

まずは真鍋さんのキッチン論を聞いてみましょう。
『台所というと、とかく電化製品の陳列場になりがちだ。どこの家庭にも冷蔵庫やオーブン、電気釜にトースター、そしてジューサーが所せましと並ぶ。電化製品の種類の多さはマイホームの豊かさの象徴であり、かつまた、その家の主婦の権力をも物語るらしいが、台所の設備投資がすすめばすすむほど、逆に台所のスペースが広く、使いにくくなっていく。

女性週刊誌などに、よくタレントや有名人の立派な台所がカラーページで紹介されたりするが、台所は広くなればなるほど、この城の女王の移動距離は延び、時間もかかるし、体も疲れるのである。』

いま、キッチンを広げようかと計画していたら、そのリフォームストップ! キッチンは広ければいいというわけではないと真鍋さん。しっかりと動線を考えて改造しましょう。

「寝るためには、派手な色の家具や置物や装飾は、むしろ邪魔」

次は寝室論です。

『ホテルの室内は、ピンクの壁紙がケバケバしく貼ってあったり、ベッドカバーがふとんのような花柄や原色模様でチカチカだったりはしない。色彩からいうと、見た目にはオーソドックスな色調であり、室内はむしろ色が沈んで暗いぐらいだ。

……寝るためには、派手な色の家具や置物や装飾は、むしろ邪魔なのである。寝るためにはベッド以上に、その眠りを静かにつつんでくれる空間=部屋がいるのである。ホテルでぐっすりやすめるのは、色彩にムードがあったり、木製フレームに凝った彫刻がしてあったりするからではない。』

寝室をリフォームするなら、真鍋さんがいう「その眠りを静かにつつんでくれる空間」の実現を真剣に考えよう。

「整理とは貯蔵ではない」

最後は整理論です。

『整理学とは貯蔵する、ためておくことだと、考えられている。しかし、整理とは貯蔵ではない。それ以前の流通が整理の主舞台であり、ものは動いて、流れて、廻って、使われているものなのである。……(略)いかにものが動き、いかに便利に使われているかがこそ、整理学なのである。

たとえば、ベッドの上には毛布がある。毛布はもちろん寝る時に使うものだが、ベッドの上に置いてあることそのことが、毛布をしまってあることをも同時に意味している。

使いたい時使え、しまう手間もいらず、ベッドにかけてあるそのことが同時にしまってもいる……そんな整理が、もっともっと身近な工学として考えられないものだろうか。』

モノが溢れて収納場所をつくろうかと考えているなら、そのリフォーム、ストップ! 単なる貯蔵は次々と貯蔵場をつくることにもなりかねません。ご用心!

岡田 憲治プロフィール

[おかだ・けんじ] 住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。
辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。
野次馬住宅net http:// www.tcat.ne.jp/~yajiuma

 

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