[リフォーム旬刊タイムス] 第15回(2007年06月掲載)

長寿命住宅とリフォーム・そして環境問題を考える その1
〜世界一長寿国の世界一短命住宅を何とかしよう

今私のまわりで「人間の平均寿命が85歳だが、住宅の平均寿命が30年はこれはひどいではないか、これを何とかしよう」が、もっぱらの話題となっています。
世界的な地球温暖化対策・CO2削減でごみ削減が取りざたされる中、木材など資源を無駄使いし大量の産業廃棄物を出す日本の住宅の建て替えは、環境負荷を与える大きな問題ではないか、というものです。考えてみるに、そもそもこの日本の住宅問題は、と大きく構えなくても、短命住宅のため、短いサイクルで建替えが行われることで、高い住宅価格やローン、資産とはならない建物価値、耐震補強の必要な劣悪住宅の蔓延、メンテナンスや内装に無関心な住まい手の意識など…に影響を及ぼしているのではないか。
経済一流といわれるわが国の住生活の貧しさは、欧米先進国にと比べて際立っているのではないでしょうか。
今月から何回かにわたり、このかながわコックさんで取り上げてみようと思います。

◇住生活基本法の登場

ところでこのような話題は、今とうとつに出てきたのではなく、伏線があったのです。
昨年6月から新しい法律ができ国の住宅政策の方針が変わったのをご存知ですか?そう、「住生活基本法」という新しい法律です。
施行からちょうど1年たちましたが、「この法律は、これまでの住宅政策を"量から質"へ転換し人口の変化やこれからの経済社会の変化を先取りし、品質本位の住まいづくりへ踏み出したもの。これまで40年間継続してきた、『住宅建設五ヶ年計画』に代わり、もう住宅は余っているので、これからは住宅の安全、品質の向上に重点を置いた新住宅政策」としています。
 主な内容は、次の通りです。
・ストックは十分
住宅のストックはいまや十分に確保され、住宅を大量に供給する時代は終わりを告げた。これから消費者に質的に優れた住宅を供給し、安全で安心できる住まいを建築、購入してもらう主旨。
・住宅の安全性、品質向上
国や自冶体に十年先の耐震化率を引き上げさせたり、高齢化社会を見越してバリアフリー化率を高めたり、温暖化防止対策を住宅面からサポートする為の省エネ化率を設定します。
・中古住宅流通
これまでのわが国の住宅は、築20年を過ぎると建物の流通(市場)評価がゼロになると言う考え方が一般的でした。ここで見なおし、建物にも質を持たせ、築年数だけでなく、適正な評価が得られる市場を実現する試みです。
 
いってしまえば、もう住宅は十分すぎるほど建ちました。これからは耐久性、快適性を高め、安全性や省エネ性を求め、リフォームして何世代にわたって住めるようにしよう。そして、中古住宅市場で売れるような住宅にしよう、ということのようです。

◇「200年住宅ビジョン」という提案

ところで、先月末から月初めにかけて、読売新聞や朝日新聞など全国紙の報道によれば、自民党から建て替えずに長期間住み続けられる住宅の普及を目指す提言「200年住宅ビジョン」という提案が出されたことが報道されました。そして国土交通省の来年度(平成19年度)の予算に組み込まれるということもほぼ決まってようです。
その内容を新聞報道から引用しますと、
「ストック型社会における豊かな住生活の実現に向けた提言の中間とりまとめ案について了承した。同案は、長期にわたって循環利用できる質の高い住宅ストックを形成し、社会全体の資産として継承していくことをテーマに議論、検討されてきたもの。
 今後は、さらなる具体化を図るため、
(1)長寿命住宅を実現するための生産・維持管理システム
(2)中古住宅流通市場の整備
(3)長寿命住宅に対応した住宅金融システム等のあり方
−−の3つの重要課題について、それぞれ小委員会を設けて検討を進め、来春をめどにとりまとめを行う予定という。」
200年もつ住宅ではなく、持たせる住宅という発想だ、といっています。
さらに「住生活の安定の確保」の一環で、「作っては壊す」から「いいものを長く使う」社会への転換。「完成した時が最も美しい住宅なのではなく、古くなるに従って住み手の手が加わり良くなっていく住宅こそが、耐久性のある住宅の条件」という。
まことに理想のストック住宅像が描かれています。

◇長寿命住宅の前に考えること

それでは、「今までの『作っては壊す』住宅政策が景気の刺激策として、わざと短命住宅を供給してきたことを自民党が白状したのに等しい。
国家ぐるみで、住宅ローンが終われば建替えで安手の住宅が乱立する、という30年周期の変なサイクルを作ってきたのだ。
なぜ住宅メーカーはローンと共に価値を失う住宅を作り続けるのか」という怒りの声も上がりそうですが、そしてまた、自動車や家電・IT製品をみても世界に冠たる日本の技術を持ってすれば、ことは簡単に解決したはず、ということもいえるでしょう。
過去の政策論争や責任論は別として、冷静に、現在の日本の住宅のあり方、生活者の住まいに対する意識、金融から税金(消費税)のあり方、考え方などを、欧米と比較しながら考えてみます。(次号に続く)

末吉 正浩プロフィール

[すえよし・まさひろ] 株式会社コスモジャーナル社代表/リフォーム&インテリア編集長
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。
主な著書に『リフォームで儲ける建設・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム・原価のからくり』『住宅リフォーム・良い業者・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著・産業調査会)など多数。
住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp

 

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