[リフォーム旬刊タイムス] 第35回(2009年02月掲載)

総集編:2009年にも通用するトレンド
既存住宅の価値実現へ『長寿命』で第一歩

昨年は住宅業界にとって画期的な法律が制定され、また建築の偽装事件がおきました。消費者にとっても、住宅リフォームに対する意識の転換点に立っていると思われます。そこでこの欄では、昨年これまでリフォームの問題点を主に取り上げてきたこれまでのテーマを、2009年にも通用するトレンドを総集編として再録してみました。最後に『リフォーム旬刊タイムス』に長い間お付き合い下しまして、ありがとうございます。

1.ネット時代の優良リフォーム会社選びは?
  バーチャル(仮想的)からリアリティ(現実感)へ

情報収集や業者選びでインターネット環境も整ってきました。リフォームする世帯主の年齢層をみると、60歳代、50歳代が多く、世帯主の平均年齢は首都圏で54.6歳。30代、40代がネット世代と思われていましたが、60代にもネットによる情報収集が広がっているようです(「インターネットによるリフォーム業者選びが増えている」住宅リフォーム推進協議会の調査から)。世代を問わず従来の地域の情報として地縁、血縁に頼らない事業者選びが増え、また企業の一方的情報に飽き足らない消費者が、自前で情報収集に乗り出しているのです。新聞雑誌やチラシに代わり、ネット時代が本格到来したようです。
しかし、きっかけや情報収集の初期段階はネットであっても、インターネットが主流になっても、リフォームの仕事は人的な要素が強い分野であるのに変わりはないからです。悪質業者の見極めはバーチャル頼りでは限界もあります。現調から見積もり、契約、という現実把握が肝要で、ネット検索による情報収集とモデルハウスやショールーム見学、担当リフォーム会社の見極めは、禍根を残さないためもリアルな目で厳しくありたいものです。

2.7割以上が1階に寝室、災害弱者の高齢者対策が急務
  ―大地震への備えで住まいの安全は?

30年を過ぎる住宅で高齢者夫婦世帯や独居老人の「寝室が1階にある世帯が7割にも達している」、と業界団体が耐震意識調査で報告しています。この一言に、高齢化時代の住まいの安全問題が象徴的に現されているように思います。
調査結果の主だったものをピックアップしてみると、・耐震補強が不十分な震災で最も危険な場所で日常寝起きしている。・そういう居住者の7割強が、家具転倒防止金具の工事などをほどこしていない。・補強を実施しない人の45%が、地震が起きても自分は被害にあわないと思う。・しかし9割の人が近い将来大地震が発生すると考えている。
全体に無関心層が多かった4、5年前のユーザーと比べて、9割の人が感じているように大地震発生に対する危機意識が高まっている。一方では、具体的で身近な家具転倒防止や非常食でも、意識の低い層では3割弱しか備えがなく、さらに耐震診断から補強工事(「平均120万円台」が限度とされるユーザーの意識がある)ともなると、さらに程遠い。

3.「減築リフォーム」が少子高齢化時代のトレンド
  ―少子高齢化が進み「暮らしやすいコンパクトな住」に価値観

減築とは、建物の建築面積や床面積を減らして住環境の改善を図るリフォームです。そのメリットは、「小さくても住み心地のいい家で快適な生活を送る」=「住まいをコンパクトに」という。
具体的には、
(1) 不要になった部屋を取り払い、吹き抜けや中庭などを設けたり、居間を広くして窓を設置することで、通風や採光がよくなる。
(2) 階建を平屋にすることで、建物の総重量が減って耐震性が向上する。
(3)1階だけの生活などで、段差の解消などのバリアフリー化を実現できる。
(4) 減築で不要な部屋を取り払い、間取りや生活前線が整理されれば、間取りや生活動線が整理され、掃除が楽になる。
(5) 建物の面積や部屋数の減少で冷房費の節減ができる。
(6) 建築確認申請が必要ないケースも多く、固定資産税など節税にもなる。
―などが減築リフォームによって実証できるとしています。
つまり住まいの関心が、従来の「面積・部屋数重視」から、少子高齢化が進行していく中で、「暮らしやすいコンパクトな住まい」に価値観をおく人が確実に増加しているのです。

4.日本のサブプライムローンといわれる『ゆとりローン』
  ―世界的な経済不況をむかえて問題表面化

国の政策で、住宅は国民個々人の大変な努力をして建てられたものです。それが金融の専門家が言うように、まさしく国策で「サブプライムローン」をも生んできたようです。
旧住宅金融公庫という国の機関が発売した「ゆとりローン」(平成12年4月に廃止)が問題です。ゆとりローンとは平成4年ごろから開始された住宅ローンで、当時は「夢のマイホームローン」として脚光を浴びていました。最初は金利が低いが、ある時期から金利が上がり支払いが多くなるため、将来必ず給料が上昇しつづける、という前提がなければ成り立ちません。100年に一度という経済不況をむかえ、「ゆとり」どころか「身の丈に合わない」借金問題が今になって表面化しています。
具体的にはこのゆとりローンの焦げ付きが64万人、3兆円に達するともいわれ、すでに平成20年から表面化し「ローン破綻者の立ち退き」など社会問題に発展しそうです。

5.住宅・建築の新法など国の住政策転換の方向?
  ―長寿命で資産価値ある住宅の実現へ

戦後の住宅難の解消〜量の確保から質の向上へ〜市場・ストック重視と住宅政策目標が変わっています。住宅の長寿命化を推進するため、昨年末に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が公布されました。それに先立つ2006年の住生活基本法に続くもので、長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックの形成に向けた道筋が示されたわけです。
世間で言う中古住宅(既存住宅)の流通や、リフォームによる住宅の再生(リノベーション)が不可欠となります。目標の実現には、日本人の新し物好きや既存住宅の住まい勝手への無関心などの問題がありますが、新法が既存住宅の価値実現への第一歩を示したのは間違いありません。住宅価値と関連した情報を集めてみました。
(1)日本の既存住宅の価値を高める
―建替え偏重から、既存住宅の価値優遇策に転換(長期優良住宅促進法)
 地球温暖化が叫ばれている中、肝心の膨大な建設廃材を排出する元凶の「毎年多くの建て替えられている住宅」が、国内だけでなく先進各国から環境面でも問題視されています。
上のデータに見るように日本は、先進各国の中で、もっとも短命な住宅を作り、膨大な量の建設廃材を出しています。しかも、日本の住宅の価値評価を示す減価償却の税制度によれば、「耐用年数が25年とすると、新築時に2500万円だった住宅が、1年につき100万円ずつ価値がなくなっていく計算」です。若いときに2500万円の家を建て、リフォームを重ねて性能を維持しても、ローンを払い終える25〜30年が経ち、リタイアする時期になると資産価値がゼロになるのです。
これを改善すべく、日本の住宅、住生活行政が大きく転換しています。
昨年末に成立した「長期優良住宅促進法」は、欧米並みに長期(○世代や○世帯)にわたり住んでいる家の資産価値が上がる。つまり「いいのものをつくって、きちんと手入れし、長く大切に使う」という価値の付く住宅の実現、ストック型社会への転換、中古住宅の重視が日本の住宅政策の大きな流れなのです。
(2)新築に代わり中古住宅重視時代が来るか?
―今のあなたの住まいの価値は?
日本の住宅購入者の傾向は、「新築の方が気持ちが良いから」では、水まわりを中心とする「見た目の悪さ」にあり、また、瑕疵や品質・性能に対する不安の判断基準も「見た目」にあります。米国と日本の違いは「専門的な検査はせず、見た目の印象で判断」していることが分りました(リクルートの購入者調査)。この「見た目」の改善策には、中古住宅購入には、住宅検査とリフォームの活用こそが肝心、と言えるでしょう。
今ある4000万戸強の戸建住宅は、耐震基準が適用された1981年以前の建築か、以降かということで耐震強度に違いはあります。しかしそれでも、実際に住めるに十分な家も沢山あります。それに着目し、これまでの土地重視の不動産取引に代わる建物重視の改善策が、ビジネスとして提案されています。昨年、インスペクション(住宅検査)を重視する専門の業界団体「日本インスペクターズ協会」設立されました。
リフォームをやるにしても建物の評価が今無い、ということが全ての問題の根幹です。1981年以前の住宅は保険がつかないので、後ろ向きでインセンティブが湧かない。つまり、どのように家の価値を上げていくかが、リフォームの場合に決め手となります。
(3)「新しいものが美しい文化」は終焉?
―中古住宅の「ヴィンテージ」ものに注目が
最近では、都心の中古マンションが人気を呼び、中古住宅と呼ばれる既存の住宅に価値を見つける、住宅購入者の傾向がでてきました。それと呼応するように、いわゆるヴィンテージ住宅、ヴィンテージマンションという名称が出始めました。
住まいは本来、心を許して気楽に過ごすための場所のはずです。建物だけでなく、立地する場所に応じた内外の空間の美しさや居心地の良さなどを含めて、そこに長く住み続けたいと思う「魅力的な住宅」と「環境(安全安心を含めた)」であることが求められます。
多くの住まいは正しく評価されれば、「25年前後で価値がなくなる」という理由はほとんど見つからないのです。しかも慣れ親しんだ成熟した街並みや近隣の付き合いが、分譲団地などのこれから新しく築く街とはおのずから大きく異なります。
そのことに、ポスト団塊ジュニアと称される30代前後の若い世代が、気付き始めたようです。

末吉 正浩プロフィール

[すえよし・まさひろ] 株式会社コスモジャーナル社代表/リフォーム&インテリア編集長
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。
主な著書に『リフォームで儲ける建設・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム・原価のからくり』『住宅リフォーム・良い業者・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著・産業調査会)など多数。
住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp

 

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