ペットと快適に暮らすためのリフォーム提案

[ゲスト]川崎 久満 氏/有限会社勝建ホーム 代表取締役

介護リフォームとペットリフォームは共通点が多い

―― 今日は、「ペットと快適に暮らすためのリフォーム」についてお話を伺いたいと思います。勝建ホームさんは高齢者の介護リフォームで実績のある会社ですが、ペットのためのリフォームにも力を入れていると聞きました。どんなきっかけで始めたのですか。

○川崎 介護リフォームで高齢者のお宅を訪問すると、大半の方がペットを飼っていらっしゃるんです。ワンちゃんが主ですけれども、一人暮らしの方も含めて、ペットを飼っている高齢者の方が非常に多いということにまず気づきました。

もう一つは、ペット用の建材は数も種類もまだまだ少ないのですが、詳しく調べてみると、高齢者に優しい建材は、実はペットにも優しいという共通点が出てきたわけです。
例えば、高齢者の方が病気を患うと、尿漏れなどによる臭いや湿気の問題などが出てきますが、それはペットにも共通することなんですね。それから歩行に関しても、床で滑ってしまうとか、段差で躓いてしまうといったことが高齢者にはよくありますが、動物病院の先生方のお話を伺うと、ペットも一般のフローリングですと、とくに小型犬などは、走っているうちに滑って骨折や脱臼をしてしまうワンちゃんが非常に多いというお話でした。

このように、高齢者の介護のためのリフォームとペットのためのリフォームというのは、非常に共通点があることが分ってきたわけです。ならば、今まで培ってきた介護リフォームの知識やノウハウをペットリフォームに反映させることによって、色々なご提案が出来るのではないかというのが、ペットのためのリフォームを始めたそもそものきっかけでした。もちろん、私自身がペット好きというのもあります。

―― 湘南には犬がよく似合うと言われますが、今は室内で飼う方が多いのですか。

○川崎 それぞれの家庭を回って確認しているわけではありませんが、屋外で飼っているお宅は3割もないと思います。皆さん、ペットというより家族という捉え方ですね。

相談のベスト3は「爪研ぎ」「臭い」「骨折」

――  お客さまからは、どんな相談が多いですか。

○川崎 ネコちゃんに関しては、一番は爪研ぎです。二番はオシッコの臭いの問題です。ワンちゃんの場合は躾の相談が一番多いですね。それと、やはり骨折対策です。床で滑ったり、段差や敷居でつまずいて骨折したというというのが多いです。

―― 犬も敷居でつまずくのですか?

○川崎 家の中で飼っているのは小型犬が多いですから。それと、人間で言う“はしゃぎ過ぎて”というような性格のワンちゃんが、結構ケガをしやすいようです。

―― ネコの爪研ぎ対策はありますか。

○川崎 ネコちゃんの爪研ぎには、専用の内装クロスというのがあって、不思議とそのクロスを貼ったところは爪研ぎをやりません。ただ、壁や柱がダメなときは、イスやソファー、家具などで爪を研いだりするようです。ペットショップなどで、ネコちゃんの爪研ぎ用に青竹踏みのようなものが売られていますが、あれもやる子とやらない子に分かれます。色々な工夫をご家族はされているようですが、これについてはクリアする手だてはまだ見つかっていません。

―― ワンちゃんの滑りや転倒対策はどうですか。

○川崎 私のところでは、床材にペット専用の滑りにくいフローリング材を使っています。実は、この床材を高齢者住宅にも使ってみたのですが、これは本当に効果がありました。靴下をはいて歩いても滑りませんでした。

―― おしっこ対策の良い方法はありますか。

○川崎 INAXの「エコカラット」やトステム INAXの「パッチンカラット」という調湿建材をお勧めしています。この建材は調湿性と脱臭効果に優れていて、宣伝を抜きにして、これは素晴らしい建材だと思います。
先日、弊社の提携店のドッグフィールドで夏のイベントがあった時に、ペットリフォームの相談窓口を出店したのですが、その時に、この「パッチンカラット」という建材の効果を知っていただくために、コースターに仕立てて1枚500円で販売したところ、飛ぶように売れました。夏に冷たい飲み物をコースターに置くと、水滴でびしょびしょになりますが、このコースターだとすぐに乾いてしまうのです。

―― 臭いはどうですか。

○川崎 臭いも消えます。私は介護福祉関係のNPO法人の理事をやっていますが、高齢者施設の方々に「パッチンカラット」の30cm角の板を1枚、トイレか押し入れに置いて下さいと言って差し上げたところ、消臭と除湿に非常に効果があったと喜ばれました。後貼りで簡単に取り付けが出来ますから、ワンちゃんコーナーの壁にアクセントとして貼ってあげるだけでも、随分と脱臭効果があります。ただ、クロスに比べて単価は高くなります。

―― 人とペット用の建材を共通で使って、衛生面など問題はありませんか。

○川崎 建材に関しては、問題はありません。洗い場などの設備機器に関しては、使い勝手の問題だけです。それに、ペット用の建材と言っても、今は先程の滑りや臭い対策のための壁材や床材が幾つかある程度です。私がペットリフォームを始めた頃は、ペット用建材はほとんど無く、最初はすべて手作りから始まりました。

計画の前にペットの性格や習性を知っておこう

――  手作りというのは、具体的にどのようなケースですか。

○川崎 例えば、分譲マンションの5階に住まわれているお客様が、アメリカンショートヘアというネコちゃんを数匹飼っていらっしゃいました。そのお部屋にはちょっとしたベランダがありまして、そこで日中、ネコちゃんを遊ばせていたのですが、ネコは手摺りを超えようとする習性があります。ベランダの腰高は建築基準法では1m10cmですから、ネコちゃんが落下しないように網を張ってくれないかというご相談でした。
ところが、網を張ると逆にそこを上ろうとするものですから、色々と考えて、アルミのパイプを組み合わせて、ネコちゃん用の横ラインの面格子を作りました。ネコちゃんが隙間から頭を入れられないようにパイプの間隔を7cmにし、同時に手を掛けても滑って上れないように、パイプは直径2cmの丸い棒にしたのです。それと、ベランダは共有部分ですから固定式はダメということで、フック式で簡単に着脱できるものを作りました。
今は建具なども、小型犬やネコちゃん専用の出入り口が付いたドアなどが市販されていますが、まだまだ手作りで対応することの方が多いのではないでしょうか。

―― 他にはどのような相談が多いですか。

○川崎 ワンちゃんを家の中で飼う方が多いので、どこにポジションを置くかという相談です。皆さん、犬用のサークルをリビングに置いていることが多いのですが、そんな時は、階段下の収納庫などをオープンにして、家族みんなの顔が見える場所にワンちゃん専用のハウスを作ってあげるといったリフォームのご提案もしています。

その場合も、ただハウスを作っただけではワンちゃんは中に入りませんから、人が来た時に、ここが自分の城なんだ、安全な場所なんだということを認識させるための環境づくりと躾が大事になってきます。

―― 環境づくりと躾ですか?

○川崎 そうです。私たちも最初は、建築の観点からペットリフォームに取り組み始めたわけですが、ワンちゃんやネコちゃんを知れば知るほど、奥が深いな、甘かったなと、反省することがたくさんあります。ワンちゃんは犬種によっても性格が全く違いますしね。
あとから躾の先生のところで、色々な資料を見せて貰ったりビデオを見せて貰ったのですが、人間社会と共生して生きていくためにも、ワンちゃん自身の安全を保つためにも、躾はとても大事で、知識を持ってリフォームの提案をしなければいけない、ということを非常に勉強させられました。単純にワンちゃんを十把一絡げで、すべてバリアフリーだ、滑り止めだということではないということです。

―― ペットによっては習性も違いますからね。

○川崎 ネコちゃんの場合は、上下運動の場所をどこに作ってあげるかという提案も必要です。ネコは常に日の当たる所でじっとしているという習性があるので、上下運動さえ出来ればかなりのストレス解消になります。ですから、日当たりの良い場所に、ちょっとした棚板を飾り棚のように交互に取り付けて、ネコちゃん用の階段にすることもあります。
犬の場合は、散歩に出さなければいけませんから、洗い場の問題などがあります。ウッドデッキを作って、そこにワンちゃん用の洗い場を設置したりといった提案です。
ペットといっても、日常の動線を考えて使い勝手を工夫してあげるという点では、人間のためのリフォームと考え方はほとんど同じです。

リフォームを機会に躾を身につけさせよう

――  ペットリフォームで気をつけたいことを教えてください。

○川崎 飼っているペットの性格や習性を知るということが一番大事だと思います。
ワンちゃんの場合は、まず犬種によってオーソドックスな性格が分ります。個々の性格については、かかりつけの動物病院の先生であれば、大抵、このワンちゃんはどんな性格が見受けられるかをワンポイントアドバイスしてくれる筈です。
次に、自分の住んでいる住宅と照らし合わせた時に、ウチのワンちゃんがストレスを感じるのはどんな場所だろうと、チェックしてあげることが大切かなと思います。
それと、これはリフォームとは直接関係はないかもしれませんが、犬を飼った以上は、散歩は飼い主の義務だと思って下さい。今は総合公園という大きな公園が幾つも出来ていますから利用されてはどうでしょう。それと、躾を兼ねたワンちゃんの運動場としてドックフィールドがありますから、ぜひ利用されると良いと思います。ここは分りやすく言うと、ワンちゃんのアスレチック場のようなところです。有料ですが、躾の問題がクリアできたり、犬同士のコミュニケーションによってワンちゃんの性格が変わったり、様々な体験ができます。

―― ペットリフォームを手がける業者さんは増えていますか。

○川崎 少ないですね。採算が合わないというのが、皆さんの率直な気持ちだと思います。
介護リフォームの時も、介護保険がスタートして、介護保険で住宅改修工事が20万円まで助成されますよと平成12年に始まりましたね。あの時は、3年ぐらいの間に建築会社がどっと参入したわけです。あれから8年が経って、今ではほんの一握りしか、まともに取り組んでいる建築会社はありません。申請や打ち合せは結構大変ですし、知らない病名を言われたり、医療と連携しなさいと言われても、建築屋としてはまったく専門外ですから、もう止めてしまおうよと言って、皆さん引いて行っちゃった。でも、僕たちはそれをやり続けた結果として、高齢者の方々や、病院、福祉関係の方々からも信頼をいただき、今こうしてしっかりと成果が上がっているわけです。
ペットリフォームも考え方としては同じだと思います。床や壁を張り替えるだけでは、リフォームの範囲としてはそう大きな利益にはなりません。でも、そこで止まるのではなく、住まい全体をトータル的にプロデュースが出来るようになることを目指して、地道に作り上げていこうというのが私たちの考えです。まだまだ手探り状態ですが、これから愉しみながら取り組んで行きたいと思っています。

―― 営業エリアを教えてください。

○川崎 本社のある平塚とその近郊です。遠くても茅ヶ崎、大磯あたりまでです。

弊社では、市内のペットショップや動物病院、ドッグラン、躾の先生方など10店舗ほど提携店になって頂き、チラシスタンドを置いて、月一度の手作り通信を無料配布していますから、もしかしたら、一度は「勝建ホーム」という名前を目にされた方も多いかもしれません。また、ドッグフィールドのお客さまで当社の会員の方には、ワンちゃんをホームページ上で紹介したりしています。

21年度は、ペットのためのリフォーム相談イベントを、各提携店で開催させていただくことも考えています。とくにプロの方に相談しているのは躾の問題です。専門の先生方と一緒に、ワンちゃんの躾教室などのミニイベントも計画しています。

―― 楽しいお話を、ありがとうございました。