
[ゲスト]板倉 崇勝 氏/株式会社Remo 代表取締役
| ―― | 今回は、手づくり家具について伺いたいと思います。
Remoさんでは、手づくり家具のオーダーメイドをされていますが、自前の家具工場を持つリフォーム会社というのは珍しいですね。 |
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| ○板倉 | 父が家具職人で、70歳になる今も現役で仕事をしています。子どもの頃から父の手伝いをさせられていたのですが、小学生の頃あたりから仕事が激減して、家族みんなで注文を取るためにチラシを配ったりもしました。そんなこともあって、何とか手づくり家具の仕事を残していく方法はないだろうかと考えて、私自身は建築の仕事に進むことにしたのです。 |
| ―― | お父さんは、どんな家具を作っていたのですか。 |
| ○板倉 | 昔は客船に取り付ける家具や、ヨーロッパ向けの輸出家具などを手掛けていましたが、最近では一般住宅や店舗用の作り付け家具を中心に作っています。
私自身は工業高校を卒業して、注文住宅の会社に10年ほど勤めました。注文住宅なら、比較的作り付けの家具などの受注も多いと考えたのです。でも実際は、コストを下げるために大工さんに作ってもらったり、既製品で対応することが多く、家具職人の出番はあまりありませんでした。それなら自分で住宅会社を立ち上げて、手づくり家具に重点を置いた設計提案やリフォーム提案をしていきたいと考えたわけです。 |
| ―― | 確かに、普通の工務店さんでは、家具を絡めた突っ込んだ提案は難しいかもしれませんね。 |
| ○板倉 | そう思います。うちはまだ小さな会社ですが、家具の注文をきっかけにリフォーム工事へと広がっていくケースが多いです。
これはあるお客様の例ですが、突然郵便が届いて中を見てみると、「ホームページを見たけれども、こんな家具をイメージしています」と言って、雑誌の切り抜きが入っていました。後で話を伺うと、色々な家具屋さんに見積りを出してもらったが、一般の家具屋さんはどうも動きが悪いというのです。結果的に私どもを気に入って頂き、小さな家具を作らせて頂きました。それをきっかけに、ご自宅の外構や室内のリフォーム、長野県にある別荘の建て替えの仕事を頂くなど、今も長くお付き合いをさせて頂いています。最初の取りかかりが家具ということで、お客様も気軽にご相談が出来たのだと思います。 |
| ―― | お客様の年代は幾つぐらいですか。 |
| ○板倉 | 30代、40代の方が多いです。ホームページを通しての問い合わせが約2割、ご紹介が4割、リピーターの方が4割です。家具が出来上がるとホームページで紹介させて頂くのですが、そうすると、お友達などに「これはウチの家具なのよ」と紹介してくださる奥様方もいらっしゃいます。 |
| ―― | どのような相談が多いですか。 |
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| ○板倉 | 比較的多いのが、新築マンションを買ったけれども、マンション会社が用意したオプション家具が何となくイメージに合わない。同じ金額を出すならもっと個性を出した家具にしたいというお客様です。
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| ―― | マンションは画一的な空間になりがちですから、家具やインテリアにこだわりたいという方は多いでしょうね。そうしたお客様の要望に応えるのは大変ではありませんか。 |
| ○板倉 | 相談を受けて、1回目のご提案ですぐに通ることはまずありません。平均すると図面を5回は書き直します。提案するときも、例えば最初は、「ここにタイルを貼ったら素敵になると思いますよ」というように、広い視点から提案を始めて、そこから徐々に細かな部分を詰めていくという感じです。マンションの打ち合せなども、長くて半年位かかることもあります。
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| ―― | どんな家具の注文が多いですか。 |
| ○板倉 | テレビボードや本棚、食器棚などの収納家具が多いですね。その延長でキッチンを作ったりもします。場所としてはリビングと水回りが多いです。部屋に出来たちょっとした隙間を埋めたいとか、収納が足りないので何か良い方法はないか、といったご相談もよく受けます。
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| ―― | 家具づくりではどんなことに気をつけていますか。 |
| ○板倉 | 家具というのは道具ですから、あくまでも生活のしやすさを第一に考えたものでなければと思っています。例えば、キッチンに造り付けの収納家具を作る場合、電化製品や調理器具はここにこれを置きたいというのが、奥様によってそれぞれにありますね。私たちがいくら、ここにこれを置いたら使いやすいだろうと思っても、実際に使われる方が使いこなせなければ、良い家具ではなくなってしまいます。
なかには、片付けが苦手という方も結構いらっしゃいますから、そのような時は、収納家具の扉はガラスをやめて中が見えないようにするとか、家具ではなく、少し広めの空間を作っておいて、来客があるときはそこに隠しておけるように提案することもあります。 |
| ―― | 家具一つで生活の仕方を変えることができるわけですね。 |
| ○板倉 | 皆さん、何か不満があるから変えたいと思うわけですから。とくに収納については、だいたいどこのお宅でもモノが溢れて困っていらっしゃるようですから、整理整頓がしやすい家具があるのと無いのとでは随分違うと思います。あと、洗面化粧台も多いですね。リフォームに限らず新築でも、洗面化粧台だけは手づくりにしたいという方は結構います。既製品では間口が合わないということもありますが、デザインにこだわりたいという方などです。 |
| ―― | 金具やタイルなど、自分の趣味や大事にしてきたものを生かしたいという方には、確かに手づくり家具は合っているかもしれませんね。 |
| ○板倉 | そうです。家具には取手やつまみがつきものですが、打ち合せの中で、もし気に入ったものがあれば探して来て下さいと言うと、皆さん一所懸命探しに行かれます。そうしてやっと探し出したものを取り付けるのですが、後々、それがもの凄く思い出になるようです、「結構苦労して探したのよ」って。少し大変でも、自分たちの手作りの部分があると、愛着も湧いてより大切にされています。
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| ―― | 素材についてはいかがですか。 |
| ○板倉 | 手づくり家具というと無垢の木を使っているという印象があると思いますが、化粧合板を使って全体のまとまり方や色合いなどを気にされる方が、結構多いです。
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| ―― | インテリアデザインの一部として、家具をコーディネイトするという感覚ですね。鉄やスチールなどの鋼材を使うことも出来ますか。 |
| ○板倉 | はい、素材は選びません。それぞれのお宅には、思い出のあるテーブルであったり、どこかで気に入って買ってきたローボードであったり、ご家族にとって大切な家具というのが必ずありますから、それはそれで用意して頂いて、じゃあ、私たちはそれらの家具に色や素材を合わせたものを作りましょうということで提案をしています。 |
| ―― | 家具はお父さんが作るのですか。 |
|---|---|
| ○板倉 | 父も作りますし、30代から70代まで、熟練した家具職人の仲間もたくさんいますから、大体のご希望には添うことが出来ます。 |
| ―― | 手づくり家具は値段が高いというイメージがありますが。 |
| ○板倉 | 価格的には、市販されているものよりは高いと思います。ですから、本棚などは既製品を買われる方が多いと思いますが、安価なものですと、すぐに棚がたわんで買い替えなければといったこともありますし、その辺は考え方次第だと思います。家具を消耗品と考えるのであれば、既成の安いシステム家具などでも良いと思いますし、小さなお子様用の家具のように、そう長く取っておく必要がないものであれば、成長に合わせて取り替えられるようにしておくのも一つの考え方だと思います。 ただ、私たちも、手づくり家具がこの金額であればけして高くはないと満足をして頂けるように、品質はもちろんですが、家具が完成するまでのプロセスやコミュニケーションを大切にするなどの努力が必要だと考えています。 |
| ―― | プロセスというのは具体的にどういうことですか。 |
| ○板倉 | 先程のお客様との綿密な打ち合せもそうですが、家具というのは作っているところを見る機会はまず無いと思うのです。とくに大きい家具屋さんなどは、注文家具と言っても遠く離れた場所で作っていることが多いので、まず見られません。
でも、せっかくの注文家具ですし、注文したらいつの間にか出来て来たというのでは面白くありませんから、私どもでは、今でも工場にお客様に来て頂いて打ち合わせをさせて頂いたり、今こういうところまで出来ていますよと報告をするなど、完成までのプロセスをお客様にも見て頂くようにしています。 |
| ―― | 日本人の中には、家具の文化がまだ育っていないという気がするのですが、いかがですか。住宅には大金を払って素晴らしい家が出来たのに、部屋の中には安いボックス家具を置いてしまうとか、貧困さがまだ残っているじゃないですか。 |
| ○板倉 | マンションなども、キッチンがあってリビングダイニングがあって、そこにモデルルームと同じ様な家具が同じ様な配置でどこの家にも置かれている。そんな時は、家具に合わせて人が住んでいるような感じがして、ちょっと違和感を感じることがあります。 |
| ―― | 自分らしいオリジナルの家具で住まいや暮らしを豊かにするという考え方がまだまだ育っていないのかもしれませんね。それだけに、これから面白さが生まれる分野と言えるかもしれません。住空間との取り合わせとの中で家具をどのように考えていくか。あとはデザインの問題とか、面白いテーマではありますね。 最後に、家具を手作りしたいという方へ、アドバイスをお願いします。 |
| ○板倉 | まずは、目的を明確にすることが大事です。デザインにこだわりたいとか、収納を充実させたいとか、入り口は色々あると思いますが、目的を明確にする。これが一つです。家具はやはり大きなものですから、失敗すると大変です。それだけに、ちょっとおっくうになったりする事もあると思うのですが、目的を持って相談して頂ければ、問題は絶対に解決すると思います。
また、作り付けの収納家具などは、生活スタイルが変わると使い勝手も変わって来ますから、初めからキッチリしたものよりは、後からプラスαの変更ができるように意識して提案をしています。 |
| ―― | 今日はどうも、ありがとうございました。 |