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リフォームかわら版

「不都合な真実」に目を背けない住生活
「家歴書」によって価値あるリフォームの時代が到来?
リフォーム&インテリア編集長
          
末吉正浩

今年の夏は例年にも増して全国的に暑い日が続きましたが、関東でも35度を超える猛暑日が続き年配者を中心に熱中症の犠牲者も目立ちました。岐阜県の多治見市や埼玉県の熊谷市で日本最高の40.9度を記録、その日は関東各地で夜になっても30度前後で寝苦しく、今年ほどクーラーや扇風機の有難みを思い知らされた年も考えられない、という人も多かったのではないでしょうか。
最近のNEWSをランダムにあげても、米国の超大型ハリケーンに代表される世界的な風水災害、オーストラリアの大干ばつ、ギリシャの山火事、北極の氷面積の極端な減少、沖縄の珊瑚の白化現象など気象に関するものがおおくなり、その中身も地球的な規模の異常気象と思える事態が発生しています。「地上と海水の温度は刻々と上がっている。その影響は至るところで顕在化し始めた」とある報告では述べています。
国では高断熱などの省エネ対策を進めていますが、新聞で取りざたされているように来年度に向けて超寿命住宅につながる方針を打ち出しました。その目玉が「家歴書」で適切にリフォームなどが行われるような、いわば住宅の健康診断書を国民に広げようというのです。今回はそれに関連した話題を追ってみました。

1.不都合な真実と日常の省エネ

映画になった元米国副大統領のアル・ゴアさんの「不都合な真実」が、本も出版され今書店の店頭を飾っています。その映画の地球温暖化の危機という「真実」は、地球全体の共通の認識になっているようです。クーラーや車などの日常生活で、地球温暖化を引き起こす温室効果がスの二酸化炭素(CO2)を私たちは大量に排出してきた結果だという。

映画と同じタイトルで最近出版された本の末尾には「できることから始めよう」という呼びかけもあり、わたしたちにできる地球温暖化対策も列記されています。また、「自宅の省エネを進めよう」、と「自宅で使うエネルギーによる排気量を減らそう」と、分かりやすく訴えかけています。また、省エネ型の照明や電化製品を選び、家屋を断熱化し冷房効率を上げることやむだな待機電力減らすなど、住まいに関連した省エネ・エコロジー対策が紹介されています。大気中に排出される二酸化炭素の削減を日常生活で行動することが一般に広く理解され、実践されている方も多いかと思われます。

2.住宅余りだがさらに建替え新築も多いという矛盾

ところで二酸化炭素の排出で、私たちが暮らしている「日本の住宅」が国際的にも悪者になっていることをご存知ですか。その話の前に、日本の住宅について考えてみましょう。

おおまかにいって、国の統計によれば現在の日本の住宅は53百万戸、総世帯数は47百万戸でその差の6百万戸以上が空き家で、比率にして約12%を空き家が占めています。何と空き家が10軒に1軒以上あることになります。しかしながら新築住宅は、依然として毎年120万戸前後が建てられ、住宅あまりは毎年進んでいるのが実情です。

このように空き家が6百万戸以上ありながら、毎年百万戸以上の住宅が建築される。そのために建て替えで壊される家も、毎年数十万戸あります。その中にはまだ十分住める住宅も含まれていることは、建築にはたらくものの常識となっています。

その結果、どうなるかというと、建替えによって壊された建物の廃材が大量に排出されることになっています。家やビルなどの建造物を壊した時に発生する建築廃材建築廃材の排出量は6,600万t/年で、電気・ガス・水道、農業に次いで多い。選別再利用も一部にはあるが大半は埋めたて処理にまわり、環境に大きな負荷がかかっています。

3.短命住宅は建設廃材を大量に排出につながる

さらに問題は、欧米と比べ、日本の住まいは寿命が短いとされていることです。住まいの寿命のサイクルはアメリカ・130年、イギリス・141年、フランス・86年、ドイツ・79年に対して、日本では約25年(最近では30年)といわれています。(※住宅の寿命=住宅が新築されて解体されるまでの耐用年数のこと)アメリカの4分の1、イギリスの5分の1という、先進各国に比べて格段の短命さです。当然のように、これらの諸外国から日本人の頻度の高い建て替えが環境破壊で目に付く、ことになったわけです。

こうしたスクラップ・アンド・ビルドの住宅建設サイクルにはさまざまな問題が生じてきました。住宅の取り壊しで生じる建築廃材は、廃棄物として環境に悪影響を与えます。さらに、リサイクル利用が難しい加工が施された建材を大量に廃材化する建築解体は、資源循環型社会に逆行するものです。また、経済効率を重視した造り方や建材はライフスタイルの変化に対応しきれずに、リフォームがかえってコスト高になるケースが多いこともスクラップ・アンド・ビルドに拍車をかけています。

住宅の寿命が延びれば建設廃棄物が減り、環境負荷を抑える効果も期待できるわけで、この欄で以前に紹介しました、200年住宅ビジョンもその一環です。環境問題を背景にわが国においても住宅を長く使うことが時代の要請ととらえ、「超長期にわたって循環利用できる質の高い住宅」の普及を目指そうというものです。

4.「家歴書に減税」で普及させるというコト

その要になるのが「家歴書」ということで、最近話題になってきました。

新聞報道によると、「国土交通省は中古住宅市場の取引活性化の支援策に乗り出す。建物ごとに改修や点検の履歴などの情報をまとめたデータベース『住宅履歴書』の制度づくりに2008年度から着手」、そして履歴書のある住宅には減税措置を適用する。提言では、新築時の設計図やリフォーム・点検などの工事履歴などを共通書式でまとめる「家歴書」の整備を中心的な施策と位置づけ、既存住宅の流通をうながす。来年度の立法措置を目指すという。(日経新聞8月26日朝刊のトップ)

「良いものを長く使う』方式を定着させて、短命といわれる日本の住宅の寿命を延ばす狙いだ」という。その住宅履歴書では新築時の設計図や定期点検の結果、震災の被害状況などの情報をデータベースで一括管理する。履歴書を使う住宅には、固定資産税や売買時にかかる登録免許税、不動産取得税を軽減する方針。

その「家歴書」は新築時の設計図書や施工内容だけでなく、リフォーム・メンテナンス時の履歴も蓄積してデータ化する。どんな構造か、どんな設備・仕様か、性能はどれだけか、誰がいつどう手を入れたか。そうした情報が邸別に整備されれば、家の状態がリアルタイムでわかり、適切で効率のいい点検・交換・改修を行えるなどのメリットが生まれます。何より、建物の価値を客観評価するのに有効なのです。考え方はそれほど目新しいものではなく、これまでも役員の2年程度ごとの交代、居住者の入れ替わりもあるため、多くのマンションの管理組合が作成、保管して、長期修繕計画などの重要な資料として活かされてきました。それを公正で権威ある情報にしようというものです。

5.家歴書でリフォームし、家の超寿命化・資産価値向上に

新築する人よりも既存の住宅を買う人のほうが減税や補助金などで優遇されるという国のメッセージで、リフォームの役割が重要になってきました。「長くもつ住宅」がスタンダードになっていくことは間違いありません。

ところで、日本の住まいの寿命が短い理由はいくつかあります。

1955年以降、高度経済成長にともない所得が増加し、つれて持ち家率も高まり、総床面積も着実に増え、短期間により広く、住みやすい家を求めて建て替えを繰り返し、結果的に住宅の寿命を短くしています。

戦後モノのない時代は雨露をしのぐ質素な住まいで構わなかったのですが、家電製品が増えて、冷暖房が普及するにつれ、より快適な暮らしを求めて住まいの建て替えが進みました。家電製品など設備機器の進歩が新築を促したともいえるでしょう。

さらに、日本人の多くは「新し物」をありがたがる風潮があり、古くなれば新品に建替えればいい、とばかりに建替えに走る。それを公的ローンや金融機関も煽りたて、米国などとは異なり家のメンテナンスやリフォームに関心が低くなっているのです。例えば、車なら常に手入れしピカピカに磨き上げれば、買い替え時に高く売れる。実は、愛車家の日常のメンテナンスは趣味と実益につながっている。今の家は日本では車より関心のないものですね。

せいぜい20年や30年で壊す前提で建てられる短命の家は、欧米から「ウサギ小屋」と蔑称されることもありました。それが「住まいが長持ち」となれば、二酸化炭素という地球温暖化の原因となる建築廃材の排出が少なくなることはもちろん、莫大なローンを一代で背負うことも無く、長期の借金から解放され、欧米人のようにリタイア後の世界旅行などの優雅な暮らしが保証できる、という計算にもつながります。家歴書によって家に対する投資が評価されれば、新築からリフォームまで日本人の考え方の大きく変化するものと期待されます。

終わりに

200年住宅となれば人生70年としても三世代が利用でき、いくつもの家族が一つの住宅を住み継いでいけるようになるでしょう。そのため、その住宅が経験してきたリフォームや点検履歴がわかる「家歴書」を整備し、既存(中古)住宅の市場での流通を促進させる方向で国が積極的に動いています。マイホームの資産価値を左右する家の履歴書が義務づけられれば、住まい手としても、趣味のDIYや自分で楽しむ家の手入れ、手直しが財産保全とつながるわけで、その延長としてのリフォームにも楽しみが加わるのは確実でしょう。

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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 末吉正浩
プロフィール
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。
主な著書に『リフォームで儲ける建設・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム・原価のからくり』『住宅リフォーム・良い業者・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著・産業調査会)など多数。
 住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp/

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