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リフォームかわら版

「新しいものが美しい文化」の終焉
―中古の住宅に「ヴィンテージ」ものが登場する
リフォーム&インテリア編集長
          
末吉正浩

◇日本人の「初物」信仰

未だ時期が早いのですが、「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と江戸時代の山口素堂が詠んだ有名な俳句があるように、初夏を代表する旬の味ですが、来月には「初ガツオ」が荷揚げされ、マスコミはじめ気の早い通人の話題になるでしょう。

「初ガツオ」や「秋刀魚」あるいは「なす」などの食べ物に限らず日本人は、「初モノ」が好きです。これはある識者に言わせると、日本の高温多湿で食品が腐りやすい風土からきている、としています。

その影響なのでしょうか、この「あたらしモノ好き」は、自動車や家電などの他の分野にも及んでいるようで、中古車、中古家電などの大半は大型廃棄物一歩手前のモノでしかないのです。結果として、廃車や廃家電が全国の不法投棄の場にあふれ、また後進国の廃家電の解体場で廃液を垂れ流すことになっています。

これなど、大量消費・大量生産を念頭に入れた生産する側、つまりメーカー側の論理で、必ずしも日本人の文化、嗜好だけとはいい難い面もあるのではないでしょうか。

地球の資源問題、温暖化問題などでこれまでのような供給側の論理が通じない事態に急速に直面しています。すでに日本の古きよき伝統「新しいものが美しい文化」の終焉が、住宅でも始まっています。すでに最近、大都市圏を中心に若い世代の、中古住宅やマンションの購入意欲が高まっているといわれます。

今回は中古住宅について考えて見ました。

◇新築信仰の結果、中古住宅が無視される

「初モノ」信仰ともいえるわが国の状況の一つに、住宅分野も入れていいでしょう。

昔から男の甲斐性(かいしょう)として「マイホームを持ってはじめて一人前」といわれます。これなどは、新築住宅を建てて一人前というようなことが、昔からいわば通り相場です。初めて買ったマイホームとしての中古住宅では、いくら素晴らしい住宅や環境であっても、新築祝いの華やかさには負けてしまいます。たとえ安普請の建売分譲でも初モノ(新築)であるとありがたく、旧来からあるものは「ありがたくない」という1点だけで、一人前の評価が下がるのです。これには築25年で一律に無価値になる日本の住宅、という税制や不動産評価の事情もあるようです。

ある不動産コンサルタントは、新築購入希望者の話を聞いていて「何で今住宅を買うのか、分らない」という人に出会う場面も少なくない、といっています。結局、不動産や住宅メーカーの宣伝に踊らされて、一生の生き方を左右する物件を衝動買いする人も少なからずいるようです。

ステイタスで新築住宅を購入するのではなく、広く住まい勝手やライフスタイルを考え、選択肢に中古住宅をも加えた住まい選びが出来る環境が整うよう、国や業界に期待したいものです。

◇もっと中古住宅に目を向けよう

統計によれば、いま日本の住宅数は5400万戸あるのに対し、08年現在でみても世帯数は4700万世帯で、700万戸で約13%の住宅が余っている、という結果が出ています。

いま新築と中古流通の比較をしてみると、日本の新築約125万戸に対し中古約20万戸、米国の新築207万戸に対し中古600万戸、英国の新築21万戸に対し中古約130万戸、フランス新築41万戸に対し中古約80万戸となっています。英国では新築はほとんど建てず、中古住宅が当たり前となっています。日本の場合は、新築に比べて中古住宅の流通量は、先進国中では異常なくらい最も低い位置にあるのです。

新築住宅よりも既存の住宅をもっと活用しなければ、近い将来、建設廃材の問題などで国際的な非難が巻き起こるのは必定でしょう。

環境・地球温暖化の視点からも、今回国が打ち上げた「二百年住宅構想」には、中古住宅やそのリフォームによるライフスタイルの創造や新しい価値の創造が、期待されているのではないでしょうか。

◇古いものに価値のある「ヴィンテージ」

一昨年のことですが、PSEマークのない電気製品が販売できなくなる問題で、電子楽器や音響機器機材などの適用除外を求めてきた音楽家、坂本龍一さんや東儀秀樹さんらが、東京都内で記者会見をおこないました。その時に筆者も“ビンテージもの”と呼ばれる希少価値の高い電子楽器・音響機器機材があることを、初めて知りました。

「ヴィンテージ」とは、カタカナ語辞典によれば、「古くて価値のあるもの、年代もの」、ビンテージ・ワインなどといわれる、という。なお、ウィキペディアには、「名品・一級品を示す用語。ジーンズなどの古着やヴァイオリンをはじめとする楽器に用いられるようになり一般化した。現在ではその使用範囲はきわめて広く、家具や日本酒などにもヴィンテージと呼ばれるものが存在する。基本的に過去の年代(およそ10年以上前)に作られた製品に対して使われ、新しい製品(10年以内)に使うのは誤りである。」としています。

◇中古の住宅に「ヴィンテージ」もの

ところで最近では、都心回帰現象といわれ、都心の中古マンションが人気を呼び、中古住宅と呼ばれる既存の住宅に価値を見つける、住宅購入者の傾向がでてきました。それと呼応するように、いわゆるヴィンテージ住宅、ヴィンテージマンションという名称がで始めたのです。

住まい勝手で新築がいいとは必ずしも言えないし、現況で住宅街に建っている住まい勝手が住み手によってすでに実証されており、住宅調査の結果で、その住宅が正当に評価されるわけです。25年で資産価値がなくなるような建物ではない、ということです。

住まいの専門家は述べています。「住まいは本来、心を許して気楽に過ごすための場所で、立地する場所に応じた内外の空間の美しさや居心地の良さなどを含めて、そこに長く住み続けたいと思う「魅力的な住宅」であることが求められます。新築で往々にして示される、理念やコンセプトでがんじがらめの住宅では、住む人は疲れてしまう。住宅にとりこまれた一部の最先端のシステムや技術の機能性や効率の良さだけではそうした気持ちは動かないのです」と、最近とみに注目されている「癒し」を求めるところでもあるのです。

築23年のヴィンテージマンションが、都内にはあります。以前にある専門誌が調査したもので、『分譲マンションの新築価格と中古価格を比べて、中古価格の方が高く、その上昇率が最も高かったのは「広尾ガーデンヒルズ・ウエストヒルIJK棟」(東京都渋谷区)でした。1985年当時の新築坪単価が262万円なのに対して、2003年の中古坪単価は361万円で、上昇率は37.8%に達しています』としていましたが、さらに2008年2月現在の物件の売り出し表示価格を見ると、坪当たりで約610万円となっています。広尾ですから、多分に土地価格高騰も影響しているとは思いますが、それにしても築27年の物件ですから驚きですが、まだ価格は上がり続けているのです。

このような億ションは別として、都心部ではヴィンテージ・住宅が確実に増えているようです。


◇「新しいものが美しい文化」の終焉

ヴィンテージ・住宅について、「個人向け不動産コンサルティングサービス」として、マンション内覧会に購入者と同行してアドバイスする個人向けのコンサル事業をしている住宅調査会社が最近増えてきています。その事業の草分けで、現在第一人者であるさくら事務所会長の長嶋修氏は、ある講演会で『住宅に対する国民の意識が、「新しいものが美しい文化」の終焉』が来ると断言しています。

そして、『これまでの日本は、税制でも融資の面でもとかく新築住宅に、より有利な体制が敷かれ、人々の意識もマイホームといえばまず「新築」がイメージされるなど、ともすると「新築が買えないから中古を」あるいは「新しいものが常に美しい」とでもいうような意識が一般的であった。しかし、今後はこれらの状況も徐々に変化、中古住宅市場の整備等も進むことによって、日本に住まう私たちは今後、新築・中古、マンション・一戸建て等の種別を問わず、マイホームの「ヴィンテージ住宅化」を目指すこととなるだろう』と中古市場の整備による今後に期待を寄せ、住生活基本法の施行以降の国の住政策にも現れているとしています。

すなわち、変化の予測として長嶋氏は、
(1)
税制
(2)融資
(3)各種法整備
(4)
インスペクション(住宅検査・調査)の普及
(5)
住宅履歴情報の整備
(6)設備・部材の統一
(7)宅建業/取引主任者基準の厳格化
(8)リフォーム市場の整備など
―が迫っていることを理由に取り上げています。


◇家の価値を上げるため消費者が「家の血統書」

犬や馬、牛などの動物に血統書というのは知られているが、家歴書ならぬ「家の血統書」が発表された。先日の朝日新聞は、新築住宅の例ですが、消費者による国産牛の生産履歴管理の仕組み「牛肉トレーサビリティー制度」をヒントにしたという「家の血統書」作りの記事を載せていました。

『建築工事のそれぞれの過程を写真入りの「カルテ」に記録することで業者の手抜きを防ぎ、ミスも見つけやすくする仕組みを東京の市民グループが考えた。…建築や金融、法律などの専門家が参加し、10年前から研究を重ねてきた。大手銀行や大手損保も提携商品を今年から発売する。住宅ローンは金利が1%程度、住宅保険は保険料が4割以上安くなるという』もので、はっきりと家の住まい手側のメリットを強調しているのが目新しいところです。

住宅は、施工不良や修繕の不備などが短命の原因とされますが、ここでは消費者を家造りの主人公にしたい、というわけです。確かに単に家の経歴を示す書類ではなく、筋目正しい長寿命住宅であれば、これは「血統書」に他なりません。たとえ数十年後の将来、中古市場で売買されることになっても、その価値は保証されるでしょう。このように消費者にローンや保険で実際にメリットがある住宅が、「家の血統書」と共に登場することで、住まいを見直す大きなきっかけになるのではないか。

また、血統書付きの家ともなれば愛着もわき、自然日常のメンテナンスを住み手が心がけるようになるでしょう。欧米のような住まいの手入れは、ご主人や奥様の趣味として登場するかもしれません。

今年は、新築住宅からも、また中古住宅流通の側からも、長寿命住宅の具体的な提案や方策が花開きそうな気がします。


◇その他

住宅が本当の資産になれば、住み手、購入者の側からは

(1)長持ちする住まい
(2)街並みが醸成される
(3)ノンリコースローン=通常のローンが個人及びその保証人がローン完済までのすべてのリスクを背負うタイプのローンであるのに対し、ノンリコースローンは責任財産のみにリスクが限定され、仮に返済が滞っても、責任財産以外に個人が保有するその他の資産(現預金、不動産、他)には強制執行されません。

(4)リバースモーゲージ=不動産を担保に、金融機関や自治体から融資を受け、死亡時など契約終了後に、その担保不動産を売却して融資残高を返済する制度のこと。持ち家など自己所有の不動産を担保として融資を受け、死後不動産を売却して返済するという逆抵当ローンのこと。

(5)ライフスタイルに応じた住み替え


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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 末吉正浩
プロフィール
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。
主な著書に『リフォームで儲ける建設・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム・原価のからくり』『住宅リフォーム・良い業者・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著・産業調査会)など多数。
 住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp/

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