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トレンドは「減築」リフォームに向かう
  ――少子高齢化が進み
    「暮らしやすいコンパクトな住」に価値観
リフォーム&インテリア編集長
          
末吉正浩

リフォームといえば、家を広くしたり、部屋を増やしたりするという常識が、最早過去のことになったようです。如何に自分のライフスタイルに合った家にするか、住まい勝手の良い家にするか、になりました。そして、その究極には「減築」リフォームという手法もあるということで、TVや住宅雑誌で紹介され静かなブームをよんでいます。

今回は話題になってきた「住まいの減築」を取り上げてみます。

1.リフォームが「増改築」と理解されていた時代

かつては家を建てるということは、特により広い住宅を手にいれることが目標とされてきました。家の改造でも、勉強部屋など部屋数を増やしたり、増築したりすることに人気がありました。というのも戦後の住宅ブームで買った分譲住宅は、家族数が増えてきたのに対して手狭になっていました。当時の住まい対する国民の不満は、そのほとんどが「部屋数が少ない、住宅が狭い」ということに集中していました。

20年前は、団塊世代の子供(団塊ジュニア)が、学童期に差し掛かったことも重なり「子供部屋の増築」という要望が、リフォーム希望の調査で圧倒的に多かったのを覚えています。当時は、住宅の狭さを手軽に解消するため、大型の物置を離れ家に改造したような子供部屋や勉強部屋に、という格安の「個室」も売り出され、人気を得ていたほどでした。

高度経済成長期の国民の大半が、増える「家族数に見合った広い家を」という夢というより切実な要望を持っていたのです。住まいに関して4、50年前からほんの10年前までは、この傾向が強かったと思います。リフォームが「増改築」と理解されていた時代です。

つまり、家を改造するということは、家を増築するということとほぼ同義語だったのです。リフォームでは修繕・営繕などの家のメンテナンス小工事や設備機器の取替えなどに対し、家の大掛かりな工事が「増改築」という名称でした。

今でもそのときの名残でリフォームの全国規模の団体名が、約25年前に結成された日本増改築産業協会という名称で残っています。

2.ライフスタイルに合致したリフォームの要望

最近私が受けたリフォーム相談でも、高齢者のご夫婦や単身者の姿が少なからず見られました。その相談の内容とは、キッチン・バスなどの設備老朽化対応やインテリアリフォームを除けば、子供が独立して家の使い勝手が悪くなったので、部屋数を減らしたい。これからの生活を考えて、高低差の少ないバリアフリーや介2階部分をなくして平屋にできないか。耐震診断などしたことがないが、一人暮らしなので心配、などでした。有効に活用できていないスペースでは「子供部屋」が目立っていました。

また、若い人の中古マンションを購入した後のリフォームの相談でも、2DKをワンルームに部屋数を減らしたい、というものでした。総じて、自分のライフスタイルにあったリフォームをしたいという要望が強くなっています。

リフォームの要因としては、「狭くても部屋数が欲しい」や、「子供部屋のため増築」という相談は皆無です。リフォームの現場では、10年ほど前からくっきりと少子高齢化社会の影響が出てきているようです。

3.「減築」の「暮らしやすい広さ」を評価−受賞作品のリフォーム事例

大手住宅設備メーカーや、リフォーム団体のリフォームコンクールや、国土交通省の所管団体である財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催の「住まいのリフォームコンクール」などで「減築」リフォームの入賞事例が数年前から出てきています。2006年には「住まいのリフォームコンクール」の最優秀賞である国土交通大臣賞には「2階建てを平屋にした減築リフォーム」(三井ホームリモデリングのH様邸)が輝きました。

これは築44年の木造住宅を、延床面積でリフォーム前12m2をリフォーム後65m2に、とほぼ半分に減築しています。動機としては、「夫婦2人だけの暮らしのため家の老朽化も気になる。マンションへの住み替えも検討したが、住み慣れた土地への愛着もある」というものでした。

2階建てを平家にした減築リフォーム


「どこにいてもお互いの様子がわかり、掃除も行き届く、暮らしやすい広さ」としています。住み心地については、「減築したからといっても、挟さや不便さは全く感じていない。目と手が届く範囲で暮らすことが、こんなに快適だとは思わなかった。とりわけよかったと実感するのは浴室で、今まで窮屈な姿勢ではいっていたのが、足を延ばせるようになって心身ともにリラックスできる。娘一家が来た時など畳コーナーで皆でビールを飲む時に、庭の緑も見えてとても落ち着く」とおおむね好評でした。減築のメリットを雄弁に語っているようです。

4.建替えで「減築」の事例―老後を見据え2階を無くし床面積半分の平屋に

近頃では、新築でも一階建ての平屋に秘かに人気があります。私が取材した神奈川県綾瀬市の事例では、リフォームの事例ではありませんが、建て替えでもともとの2階建てを平屋から建替えることにこだわった、平成19年6月11日入居のオーナーさんの話です。

ご主人は、残りの約1年後にサラリーマン生活からリタイアの予定で、定年後にこの家でご夫婦2人仲良く静かに悠々自適で暮らしたい、と2階建ての住宅を1LDKのワンルームの平屋に建替えました。ご夫婦一緒のところにお邪魔しました。

「クーラーも今27度くらいにしてありますが、それでも暑いという気もしないですね。今日は気温がかなり上がっているのですが。また、天井の吹き抜けがかなり高いので、それのかげんもあるのかも知れないのですが。

2階建てを平家に建替え

前は2階建ての普通の建売住宅を31年前に買ったもので、昔の建てれば売れるという時代の酷い安普請でしたから、よけい業者の選定には気を使いました。最初から建替えるときに、二人だけの小さいうちでいい、と二人で話し合って決めていました。あまり大きな家でもないので、建築業者としてはそれほど儲けがないからいい顔をしない。2階家から平屋になりましたがその方が住まい勝ってはいいですね。だいたい前の家では、2階は物置状態になり、あまり2階に上らなくなくなっていましたね。それで話が煮詰まって、部屋数を少なくしてこういうプランが欲しいということで決めました。

この金額では平屋は建てられない、と2件のメーカーに依頼して断られました。営業マンには、平屋というと鼻で笑われてしまう有様でした。プレハブの大手メーカーの展示場にも行ったが、23坪の平屋だと相手にしてくれないのです。平屋は思った通りには行かないですよ、ともいう。「平屋でもいいよ、坪単価は変わらない」とも言ってくれました。それに家に対する社長の思いが感じられたので、お願いすることになったわけです。

台風の日でもそんなに揺れを感じなかったし、前のように夜中にとび起きることはなかった。前の旧い家の場合は1階にいてもガタガタとすごく揺れたものでつい、比較してしまいますが。もちろん建てたばかりでガタガタするのでは困るのですが」というもの。

先のリフォーム事例のような、生活動線や耐震面でもメリットを感じているようです。


5.一人家族や「夫婦のみ」家族が増えている

その背景を考えてみましょう。日本は人口減少社会に向かいつつあるとされていますが、問題は家族の構成人員の規模です。ほぼ統計によれば、50年前の1960年の一般世帯の平均人員規模は4.14人とほぼ夫婦と子供が2人以上といった家族構成が普通でした。それが1980年に3.22人、1990年に2.99人、2000年に2.67人、2005年の2.55人に減少し、1家族の平均人員が3人を割って、2人半になっているのです。しかも、今から16年後の2025年には2.37人になると推計されています。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2003年10月)」による)

確実に「夫婦と子供」世帯や三世代世帯などが大幅に少なくなり、それに代わり「単独」世帯や「夫婦のみ」世帯が増加する時代に、確実に近づいてきているのです。

最近といっても平成15年の総務省「住宅・土地統計調査」によると、「高齢単身」世帯および「高齢夫婦のみ」世帯の住宅室数は平均で4.36室と5.47室で、高齢者世帯はかなり部屋数の多い住宅に住んでいます。つまり、お年寄り1人で4室から5室の家に住まい、または年配のご夫婦2人で住んでいる家が5室から6室もあるのです。そのため、少子高齢化の中で、従来の「面積・部屋数重視」の傾向から、「暮らしやすいコンパクトな住まい」に価値観をおいている層が増加しています。

6.終わりに―「減築」のメリットを考える

耳慣れない新しい用語とも言える「減築」とは何でしょうか。

減築とは、建物の建築面積や床面積を減らして住環境の改善を図るリフォームです。そのメリットは、「小さくても住み心地のいい家で快適な生活を送る」=「住まいをコンパクトに」というもののようです。

具体的には、

(1)不要になった部屋を取り払い、吹き抜けや中庭などを設けたり、居間を広くして窓を設置することで、通風や採光がよくなる。

(2)階建を平屋にすることで、建物の総重量が減って耐震性が向上する。

(3)階だけの生活などで、段差の解消などのバリアフリー化を実現できる。

(4)減築で不要な部屋を取り払い、間取りや生活前線が整理されれば、間取りや生活動線が整理され、掃除が楽になる。

(5)建物の面積や部屋数の減少で冷房費の節減ができる。

(6)建築確認申請が必要ないケースも多く、固定資産税など節税にもなる。

――などが減築リフォームによって実証できるとしています。

また、「減築」は必ずしも面積を小さくするだけではなく、部屋数を減らし一部屋を大きくすることや風呂、トイレ、廊下などに面積的なゆとりを持たせるなど、高齢期の身体機能やライフスタイルに合うようにリフォームすることも可能です。

つまり住まいに関しての関心が、従来の「面積・部屋数重視」の傾向から、少子高齢化がますます進行していく中で、「暮らしやすいコンパクトな住まい」に価値観をおいている層が確実に増加しているのです。


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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 末吉正浩
プロフィール
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品?・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。
主な著書に『リフォームで儲ける建設?・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム?・原価のからくり』『住宅リフォーム?・良い業者?・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著?・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著?・産業調査会)など多数。
 住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp/

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