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リフォームかわら版

いま、あなたの住まいに価値がありますか?
―住宅検査の業界団体
  「日本インスペクターズ協会」立ち上げ―
リフォーム&インテリア編集長
          
末吉正浩

以前(昨年12月号)このコックさんかわら版で、「インスペクションを知っていますか?」と住宅検査のことを話題にしました。おさらいしますと、『インスペクション』あるいは『ホーム・インスペクション』とは、住宅の調査・検査・監査という意味の英語[Home Inspection]で、アメリカでは普通に住宅の購入や住宅建築の際に専門家が行なう検査です。先月18日に、住宅診断に携わるビジネスを目指す東京、名古屋、大阪などの同業者11社が集まり、「日本ホームインスペクターズ協会」が発足しました。今回はその協会の役割、さらにあなたの住まいの価値を高めるリフォームと住宅検査について考えてみます。

◇注目される住宅検査ビジネスの信頼性向上へ

確実に訪れる本格的な少子高齢化や圧倒的な住宅余り、もはや待ったなしの環境・資源問題への取り組みなどが、住宅分野で必須の課題となっています。中古住宅市場の整備、中古住宅の価値向上は、国民のみならず、国全体の利益につながるものだからです。

国内でも、最近、中古住宅への関心が強まり始め、近年、住宅診断(ホームインスペクション)」のニーズが急増し、インスペクション企業も着実に増えていると言われています。2002年より住宅診断業務を提供しインスペクション事業で代表的な企業でもある、さくら事務所では、昨年の実績で「前年比200%の診断依頼(2007年度実績)。場合によってはお断りせざるをえないほど依頼があり、インスペクション事業を行なう民間企業などプレイヤーもここ数年で相当数、増加している状況にある」としています。

そこで、専門家を育成し中古住宅流通市場の透明化・活性化させることを目的に、インスペクターの研修・試験や消費者への紹介、建物知識の普及活動を行なう団体を設立したわけです。

発足した協会では、理念、インスペクターの技術や診断項目、倫理規定についても業界基準を定め、しかるべき教育・試験を受ける公認インスペクター制度を発足させることで、米国並みに住宅診断の信頼性向上と普及に努めようという。あわせて、消費者に対する「住宅は長く大切に住み継ぐ資産」といったキャンペーン活動も予定しているようです。

◇払い終わったとき建物の評価で価値が無い現状の既存(中古)住宅事情

二百年住宅が話題となっていますが、われわれが住んでいる既存住宅は、どう評価されているのでしょうか?

中古住宅の価値やリフォームについて考える、業界の専門家が集まった勉強会がありました。その中で、日本の住宅業界の現状についてかなり厳しい意見が出されました。討論概要で関連する部分をご紹介します。

元住宅営業のプロ:高度経済成長期は金利が高かったし、金利が下がっても建物価値がなくなっても、土地が上がって、給料も上がっていたからそれをカバーしていた。建物の価値がゼロでも十分にペイしていました。ところが、地価が上がらず、給料も上がらない、となると住宅建築をすることはむしろマイナスになってきます。つまり建物に価値が残らない限り、お金の計算をしてみれば明らかに新築住宅を買っても損になるのです。

金融のプロ:木造の住宅の耐用年数は22年ですが、20年以上価値がなくなってもローンを払い続けています。それなら払い終わったらどうか、と言うと、そのときには価値が無いのです。ローンと賃貸との差は全く同じではありません。ローンは家を売っても借金だけが残りますが、賃貸の場合、借金は残りません。ただ、老後にお金を貸してくれるのは、一戸建ての土地があるところにはお金を貸してくれますが、マンションは貸してくれません。戸建も貸して家賃が取れる地域とそうでないところでは違うのです。

住宅評論家:これまで日本の住宅市場は、業者の利益に過度に偏重してきました。国民一人ひとりの利益はついぞ、省みられることがなかったのです。私たちは『住宅すごろく(賃貸アパート→分譲マンション→庭付き一戸建てで上がり)』のゴールを目指しておどらされ、『土地にのみ価値がある』とされるルールのなかで、価値がゼロになる住宅という耐久消費財を獲得するために、一生懸命(文字通り命を懸けて)ローンを払い続けてきました。結果は、ローンが払い終わる定年期になって、財産が手元には無いというのが大半の庶民の現状なのです。

住宅融資の専門家:ローンは建物の評価ではなくて、人の年収になっています。日本の場合は人の評価でお金を貸しています。住宅という物にはお金は貸さないのです。結果として、ローン残が、わずかに100円残っていたとしても(住宅は)銀行のもので、自分のものでは無いのです。定年間際のこれまで年収で800万円であった人が400万円まで下がっているため、ローンを返せない、という現実があります。

多くの人は、苦労して家のローンを払ってきた結果に愕然としますね。

◇住宅ストックの現状とインスペクションの問題点

中古住宅の流通事情に詳しい筆者の知人は、不動産業界の商慣習及び検査ビジネスの基本的な問題点として、概要、次のようなことを挙げています。

(1)既存住宅の工法・材料の種類が多く、検査内容・評価・判定基準に統一性が無い

(2)既存住宅は図面がない、現場は図面と違うケースが多く住宅履歴情報が未整備

(3)検査会社の中立(第三者)性の問題と検査内容に対する保証がない

(4)検査員の資格内容が不明確・現場経験者が少ない

(5)既存住宅の目視検査には限界があり、検査員の判断及び機械検査もバラツキが多い

(6)欠陥住宅のあら探しの検査が多く、資産価値を上げる検査でない


新築住宅の検査が主体のため既存住宅の検査は少なく、ストック住宅は膨大にあっても流通市場はないというのが実情です。

またインスペクションを行なう協会の課題としては、

(1)検査業界の認可・資格制度および検査員の教育・研修・資格

(2)金融機関の融資条件や損害保険の加入条件として定着させる

(3)任意検査を義務検査と連動させる

―の問題解決が業界全体として期待されているのです。

つまり、リフォーム事業と同じく、この新しく注目を浴びている業界でも、事業内容の質やモラルが問われているのです。

◇国民の住宅資産とインスペクションの役割

もう一度住宅診断の意味について、同協会の資料から整理しておきましょう。
まず、『わたしたち日本国民が、安心できる暮らしを営むためには、何より国民が資産を持つことが必要です。日本の住宅市場の問題を解決すれば、国民はもっと豊かになれるのです。
つまり既存の住宅は、インスペクションを行うことで、「そのままで問題がない住宅」「補修を加えて永く大切に住み継いでいく住宅」「保全できず取り壊す住宅」と、大きく三つに分けられます。さらに図面のない住宅は、インスペクションを行って新たに図面を起こす必要もあります。

新築であれ中古であれ、市場の取引時点での健康診断(ホームインスペクション)を行い、住宅の現状把握をし、適切な補修・リフオームを行うこと。これを繰り返すことで、中古住宅市場全体の信頼感を醸成していく』ことにあるようです。

従来は、新築を売らんかなの住宅メーカーの営業マンの都合で、または売買手数料欲しさの不動産仲介業者の利得のため、勝手に判断査定されていました。これからは協会指定の資格を持ったインスペクター(検査員)が、消費者と業者の間に立ち公正中立な視点から、建物の評価を専門的にしかも的確に判断するというわけです。


◇リフォームで「中古住宅の価値=ユーザー(国民)の利益」に

ある建築専門業者は言っています。

今ある4000万戸の戸建住宅は耐震基準が適用された1981年以前の建築か、以降かと言う違いはありますが、最低限の価値があるはずです。実際に住めるに十分な家も沢山あります。
リフォームをやるにしても建物の評価が今無い、ということが全ての問題の根幹です。1981年以前の住宅は保険がつかないので、後ろ向きでインセンティブが湧かない。つまり、どのように家の価値を上げていくかが、リフォームの場合に決め手となります。

そして、「私はいま若い人たちに中古住宅を買いなさい。そして少しの金を掛けてリフォームしなさい。そして金が溜まったら、建替え・新築しなさい」と言っていますが、現状は、中古の住宅があまりにも少なくて、流通していないから買えないのです。

「新築住宅の価値=業者(企業)の利益」あり続けてきましたが、これからは「中古住宅の価値=ユーザー(国民)の利益」に転換しなければなりません。とインスペクターズ協会は、設立目的の資料の中で述べています。

インスペクターの技術基準・倫理基準などについて、業界のスタンダードを定め、中古住宅購入者が安心してホームインスペクションを利用することで、中古住宅流通の活性化に拍車がかかることを期待されます。その結果、一般の国民が住んでいる住宅の価値を認め、資産価値の上がるリフォームが積極化することにつながると思われます。

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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 末吉正浩
プロフィール
沖縄県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業。重化学工業・食品・住宅など各産業専門誌に記者として勤務した後、85年(株)コスモジャーナル社を設立し、隔週刊『リフォーム&インテリア』を創刊。同年より同誌編集長となり、現在に至る。R> 主な著書に『リフォームで儲ける建設・不動産会社』『笑いの止まらないリフォーム会社の作り方』『住宅リフォーム・原価のからくり』『住宅リフォーム・良い業者・ダメな業者』(エール出版社)『インテリアリフォーム百科』(共著・インテリア産業協会)『住宅リフォーム実務マニュアル』(共著・産業調査会)など多数。
 住☆リフォーム・ねっと http://www.cosmoj.co.jp/

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