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ぶつくさおばちゃんの独り言
「老後の住まいにこれだけは欲しいもの」の巻き
エッセイスト ぶつくさおばちゃん

十ン年振りに高校の同期会に出かけた。

 会場はいま話題の映画「フラガール」で、ブーム再来かと地元の期待が募る「スパリゾート・ハワイアンズ」である。というより、おばちゃん世代には「常磐ハワイ」の方が馴染みがいい。なにせおばちゃんの子供の頃には、農協の旅行と言えば常磐ハワイ! 家族旅行と言えば常磐ハワイ!! 新婚旅行と言えば常磐ハワイ!!! と言うくらい超人気の観光地だったのだ。それがいつしか経営難に陥り、さっぱり名前を聞かなくなったと思ったら、どっこい不死鳥のごとく今まさに蘇ろうとしているではないか。これは行かずばなるまい。

 というわけで、ロビーに着いて驚いた。人、人、人である。それもみんな同じようなムームーとアロハを着ているから誰が誰やら見分けがつかない。赤やブルーの一団を掻き分けて、幹事のエガワ君が遠くから「おばちゃん、こっちこちっち」と手を振る。「今日は満員なんだって。俺たち運が良かったよ」とニコニコ。彼も、我らが思い出の地「常磐ハワイ」が元気に頑張っているのはやっぱり嬉しいのだ。

 さて、夜も深まり宴もたけなわになってくると、マエサワ君が「俺さ、こんどリフォームするんだ。定年後のこともあるし、自分のために趣味の部屋でも作ろうかと思ってさ」と言い出した。マエサワ君は高校の教師である。定年と言ってもまだまだ時間はあるのだが、先輩方を見ていて何か思うところがあったようだ。

 「ところで、趣味って何やるの?」 「それをこれから、じっくりと探すんだよ」

 どうやら性格というのは何十年経とうが、そう簡単には変わらないものらしい。

 「あらー、うちも今度リフォームするのよ」と今度はヤスエちゃんが叫んだ。こっちはバリアフリーにするのだという。一級建築士のエガワ君が「最近、ほんとにリフォーム増えたよね。一番はやっぱりバリアフリーかな。次にお風呂だね」と専門家らしく最近のリフォーム事情を話し始めた。それを皆んな「ふぅ〜ん」と妙に真剣に聞き入っている。

 「ところで、バリアフリーってどうするの?」

 「各部屋の間仕切りを取ってワンルーム風にしてフローリングに変えるの。お風呂も広くして段差をなくそうと思って」とヤスエちゃん。

 そんな話を聞きながら、昔ある大学の先生から聞いた話を思い出した。先生曰く、子育て後の住まいを考えるときに大事なことは、「年をとった時に、誰と、どこで、どんな風に暮らすか」なのだそうだ。最終的に高齢者用マンションに移るという以外は「夫婦二人で、自宅で」ということになるわけであるから、ケガの予防はもちろんだが、万一介護が必要になった時のことを想定して計画を立てろということらしい。

 「寝込みがちになったり車椅子が必要になったら、やっぱり欲しいのは窓だな。布団の上から見たいものがいつでも見られる窓。庭の花とか、外を歩いている人たちとか」

 「近所のお友達が通りがかりに気軽に覗いて、元気にしてるって声を掛けられる縁側みたいなね。」

 「そういえば昔、映画で見たサナトリウムに憧れたな。美人の主人公が胸を病んで入院しているんだけどね、ベッドから窓の外の木立を眺めながら、あぁ、今年も春が来たわねぇって。何だかわかんないけど、あの景観よかったわぁ」

 「ウチの寝室はダメだな。2階で窓も高いし、見えるのは隣の家の壁と屋根だけだし」

 「そういえば、病院も老人ホームも部屋の中って閉鎖的だよな。見舞いに行ってもさ、中がどんなに豪華でも長居する気になれないよな。まぁ、自分の居場所は自分で作れってことかね。その時に備えて庭の手入れもしておくか」

 それぞれがわが家の改造計画に思いを馳せ一瞬座が静かになったところで、エガワ君が一声叫んだ。

 「えー、リフォームのご用命はエガワ一級建築士事務所へ。ご予算、相談させて頂きま〜す」

 やはり、性格というのは何十年経っても簡単には変わらないものらしい。 

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ぶつくさおばちゃん
エッセイスト。雑誌・新聞社、住宅メーカーなどの編集業務に携わり、現在、エッセイストとして活躍。

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