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ぶつくさおばちゃんの独り言
「トイレ掃除が取り持つ家族の絆」の巻き
エッセイスト ぶつくさおばちゃん

 パラパラと何気なく本をめくっていたら、「夫がトイレを立って使うのを禁止している家庭が増えている」という一文が目に飛び込んできた。

水回りメーカーT社が行なった調査で何年前のデータかしかとは分からないが、少なくとも4年以上前のものであることは前後の文章から推測された。ということは、今はもっと増えているのだろうか?

「ちょっと、ちょっと。夫に立ったままトイレを使うのを禁止している奥さんが増えているらしいよ。掃除が大変だからだって。男の人の肩身も随分と狭くなったものだわねぇ」
と、己の寛容さを強調したところ、何を今さらとお父ちゃんから一笑に伏された。

「我が家のトイレが築6年以上経つのになぜ臭くないか、君は考えてみたことがあるかい」
「掃除が行き届いているから!」「ノー」「防臭機能付きだから!」「違いま〜す」
「何を隠そう、僕の使い方がいいからだ」「?????」
「トイレの臭いのもとは便器の内側ではなく外側に飛び散った飛沫なんだ。飛沫と言っても目に見える水滴だけじゃない。霧状のものが床や壁にこっそりと張り付いて、そこに細菌が繁殖し、気がついた時には強烈な臭いを発するというわけだ」
「げーっ。敵は床と壁にありか。ということは、お父ちゃんも便座に座って・・・」
「違うよ。確かに便座に座れば飛沫は外に飛ばない。だけど俺はいちいちズボンを脱ぐなんて面倒臭いことはしないさ。要は試行錯誤の結果、物理的に飛沫を飛ばさない高さと角度を割り出したというわけだ」

想像してみたがどうもよく分からない。そこには立ち入ってはいけない男の世界があるようだ。それはさておき、お父ちゃんがここまでトイレの汚れにこだわるには訳がある。

ただ一言、「掃除が面倒」だからである。

わが家にはトイレが1階と2階にあるのだが、いつの間にか何故か2階トイレがお父ちゃん専用のようになってしまった。そうなると面白いもので、掃除も自分ですることが暗黙の了解となり、結果、汚さないための使用法研究へと高じていったらしい。

人様はどうか知らないが、おばちゃんが最近の水回りの進歩でありがたいと思っているのは、なんと言っても掃除が簡単なことである。便器は使用の都度スポンジで洗い流し、濡れティッシュでサッサッと拭いておくと汚れは付かないし、洗面ボールも使った後に指の腹でキュキュキュっと石鹸カスを洗い流しておけば、いつまでも光沢を保っている。ユニットバスのカビはさすがに完全にシャットアウトとはいかないが、入浴後に窓ガラス用のワイパーで壁と床の水滴を切り、換気扇をしばらく回して湿気を追い出すとかなり防ぐことが出来る。

つまり、家族で使用後のルールを決めて実行しさえすれば、「さぁ、やるぞー」と気合いを入れずとも、掃除がラクに済ませられるという訳だ。

ガスレンジ周りのタイルに至っては、炒め物や煮炊きの直後に熱いお湯で絞った布巾でざっと拭き取るだけなのだが、6年以上経った今でも目地は真っ白、タイルはピカピカ。

どうも表面処理加工の進歩と関係があるらしい。生えて当然のカビがまったく生えてこないというのも不気味ではあるが、理屈はさておき、有り難いことではある。

最近、近くに住む両親を見ていて思うのだが、歳を取ってまず手を抜きたくなるのが掃除である。食事はスーパーの総菜や冷凍食品を利用すれば、それほど不自由はしない。洗濯もスイッチポンで機械がやってくれるが、掃除だけはそうはいかない。しゃがんだり、身体を曲げたり、とくにトイレや水回りなど狭い場所は歳を取るほど大儀になるらしい。

実を言うと、トイレや水回りは数年前にリフォームをしているのだが、設備機器や内装を新しくしただけで、広さや動線は手つかずのままだ。もしあの時、安全や快適さと共に掃除のしやすさといったことも含めて間取りから考えていたら・・・と思うのだが、終わったことは仕方がない、立場上、遠慮が先に立つ嫁に代わって孝行息子が、「歳を取って抵抗力が弱っているのに、不衛生にしていたら駄目だろう」とズケズケと文句を言いつつ、結構まめにトイレ掃除をしてやっているところを見ると、これはこれで「まっ、いいか」と思ったりもする。

何はともあれ、お父ちゃん、あんたはエライ! 亭主の鑑だ! 感謝、感謝。

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ぶつくさおばちゃん
エッセイスト。雑誌・新聞社、住宅メーカーなどの編集業務に携わり、現在、エッセイストとして活躍。

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