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ぶつくさおばちゃんの独り言
「老いも若きも六本木」の巻
エッセイスト ぶつくさおばちゃん

最近、よくモノを無くす。昨日はここにあったはずのものが、今日はいくら探しても見つからないのだ。そのたびに片っ端から引き出しを開けては探すのだが、見つからない。そこで、父ちゃんが「収納リフォーム案」なるものを言い出した。

一言で言うと、

1)収納は一箇所にまとめて、
2)
分類はおおざっぱに、
3)
扉で隠さずオープンに、
4)
なおかつ見た目に美しく、

というもの。「これで我が家の老後生活も安泰だ」と、悦に入っている。

話は変わるが、「六本木ミッドタウン」見物に行ってきた。

途中、東横線の中目黒で日比谷線への乗り換え待ちをしていると、「あのー、南千住へはこの電車でいいのかしら?」と品の良い年配のご婦人に尋ねられた。とっさのことで南千住の駅がどの辺りにあるのか思い浮かばない。路線図を確認して、「次の電車は北千住行ですから、南千住は終点の手前の駅ですよ」と答えたものの、何となく心配で、駅員さんにまで確認してしまった。

席に座わると、おばちゃまがニコニコと隣の席にやってきて腰を掛けた。「これからお友達と六本木で会うんですけどね、南千住行きの電車に乗りなさいと言われたものですからね」と仰るではないか。

「な〜んだ。六本木で降りるんじゃないの。それなら最初から言ってくれれば・・・」と思いつつ、「それは良かったですね」と話を合わせるうちに目的駅に到着。「どうもありがとう。ではお元気でね」と丁寧に会釈をされたものだから、降りるに降りられなくなってしまった。おばちゃまの姿が見えなくなった頃に脱兎の如く電車を降り、反対側の改札に走った。

高齢の方と接していると、「年を取ると言うことはこういうことなんだなぁ」と考えさせられることがよくある。

亡くなった母と出かけた時も、駅の切符売り場や改札口で、冷や冷やさせられることが何度かあった。お釣りを財布に入れたり、バッグの中の切符を探すことにだけ目が向いて、その場に立っていると人の流れの邪魔になるという事に気が回らない。

本人に悪気はまったくないことは分かっていても、自分の身内となると、恥ずかしさや「こんな人ではなかったはずなのに」という情けなさも手伝って、つい大声で「そこにいたら皆の迷惑になるでしょ。脇に寄らなきゃ」と、腕を乱暴に引っ張ったことがあったっけ。

年を取るということは、何も運動機能が衰えることだけとは限らない。思考の狭まりが行動に制限を与えてしまうこともある。さすがに「おばちゃん」と呼ばれる歳になると、「おやっ」と思うことがあっても、口の利き方にしろ、身のこなしにしろ、少しは分別のあるサポートの仕方が出来るようになってきたとは思うのだが、あの頃の母の気持ちを思うと、時々、心がチクリと痛む。

六本木ミッドタウンを見物したあとは、そこから歩いて数分の国立新美術館を回った。どちらも豊かな緑が印象的で、平日のせいか、テラスで寛ぐ「おじちゃま」「おばちゃま」たちでいっぱいだった。デパ地下やレストラン巡り、観劇もいいが、知的好奇心を満たし、なおかつ自然の中でゆったりとくつろげる場所が都心にあるというのはいいものだ。

それにしても、日々、改築、改修が急ピッチで進む都市空間と交通網。便利になった分、複雑さも増し、最近では片時も路線図や地図を手放せない。朝に会ったニコニコおばちゃまは、迷わず気持ちよく家に帰ることが出来ただろうか。年を取るとお節介にもなるらしい。

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ぶつくさおばちゃん
プロフィール

エッセイスト。雑誌・新聞社、住宅メーカーなどの編集業務に携わり、現在、エッセイストとして活躍。

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