|
田舎育ちのおばちゃん家では、お盆と正月には必ず実家に帰り、墓参りをするのが習わしだ。この夏も、みんなが旅行だ! レジャーだ! とウキウキしているのを横目で眺めながら、ご先祖様をおもてなしすべく、墓参りに帰った。その際、地元新聞にちょっと面白いチラシが折り込まれていた。渋谷区恵比寿のM工務店のチラシで、
「東京にお住まいの息子さん、娘さんにおすすめください!
木造新築、増改築、マンションリフォーム、なんでもおまかせ下さい。
親切・丁寧・確実がモットーです」
と、住まいの建築リフォーム相談の案内が書かれていた。
社長さんの略歴を見て、なるほどと納得がいった。息子さんの文章だろうか、
「親爺は地元○○市から東京の八丁堀に大工の修業弟子入り。昭和29年4月中学校卒、集団就職第一号です」
ホームページを見ると、現在社員は8人。M社長と弟、同じく地方出身の大工さんたち50代、60代を中心に、20代のそれぞれの息子さんたちが若手として頑張っていた。
少し経って、地元新聞の「就職列車」と題した記事の中に、M社長の話が載っていた。
生活の面倒や仕事を教えてもらう代わりに給料はなし。半月ごとに2百円の小遣いを貰い、休暇は月2日のほか、7月の藪入りと小正月の各2日間。拭き掃除、風呂掃除、家事と何でもやらされた。
5年の年季奉公を終え、親方や一門の人たちが開いてくれた祝賀会の写真も載っていた。
立派な料亭で御膳を前に、出席者の全員がネクタイを締め、襟を正して写真に収まっている。長い年季奉公を終え、ようやく一人の職人として認められるけじめの儀式であり、一門に仲間として初めて認められた祝いの式でもある。
神奈川の工務店さんの中にも、「親父が若いときに△△県から出てきて、この店を構えましてね」というところが結構多い。同郷の大先輩の話を茶飲み話に聞きながら、建具のきしみや壁紙の張り替えなど、日頃気になる家のことを相談してみるのもいいかなと、そんな気持ちにさせる、あったかいチラシだった。
|