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ぶつくさおばちゃんの独り言
「夫婦の経年変化」の巻
エッセイスト ぶつくさおばちゃん

熟年夫婦の多くが、寝室を別にしているという話を、若かりし頃に聞いたことがある。

「えっ、うっそー。何で、何で?」と、その時は思ったものだ。

先輩おばちゃんたちは一様に口を揃えて、「そりゃあ、亭主のイビキがうるさいからに決まってるじゃない。アッハッハー」と、笑った。

その時は「そんなものかいな」と、少し軽蔑していたが、ついにというか、当然というか、わが家にもその日がやってきそうなのだ。

ただし、原因は亭主ではない。女房である。

近頃、自分のイビキで目が覚めることがある。身体を横向きにして寝てみたり、枕を取っ替えひっかえしてみたが、どうにも止まらない。もしや、お父ちゃんに多大な迷惑をかけているのではと思って聞いてみると、「いいよ、いいよ」と寛大なお言葉。迷惑をかけまいと、口をぎゅっと結んで寝るせいか、噛みしめ癖がついてしまい、奥歯の根にヒビが入ってしまった。

イビキで困っているのはおばちゃんだけだろうかと思い、グループ旅行の際などに注意していると、何のことはない。部屋中、イビキの大合唱である。しかも、「こういう時はね、先に寝ちゃった方が勝ちなの。アッハッハー」と皆さん、実に明るい。

しかし、今夜もイビキをかくのではないかと思うと、繊細な神経のおばちゃんは、どうにも気になって熟睡できない。そこで思い切って「部屋を別にしようか」と切り出した。

わが家の不文律のひとつに、夫婦ゲンカをしても、別々の部屋には寝ないというのがある。不思議なもので、どんな大ゲンカの後でも、気持ちを入れ替え、朝一番の「おはよう」の一声で仲直りができるものである。その不文律を破ってまで、部屋を別にしようというのである。

さて、問題はどこに寝るかである。こうなると欲が出て来て、どうせならテレビも見たい。お気に入りのロッキングチェアも置きたい云々と、寝室というより、まるで「私のお部屋選び」である。そのうち、インテリアも私好みに変えたいと思うようになるかもしれない。

「こうして家庭内別居へと発展するんだわ。やっぱり、やーめよっと」。

すると、お父ちゃんが一言。

「仲のいい夫婦だって年をとれば、こんな筈じゃなかったということが次々出てくるさ。第一、睡眠は美貌にも影響するっていうし、そんなに気になるんだったら寝室を別にしてもかまわないぜ。これは夫婦仲が醒めたとかいう問題じゃなくて、まぁ、言ってみれば、夫婦の経年変化だな」

「うまい! 座布団一枚」。なんて思いつつ、あまりの物わかりの良さに、「もしかしてお父ちゃんは、おばちゃんがこの言葉を言い出すのをじっと待っていたんじゃないの」と穿った見方もしたくなる。ホント、夫婦って難しい!

と言う訳で、今のわが家にとって寝室問題は、夫婦の愛? を確かめ合うデリケートなテーマになっている。

アブラツツジ

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ぶつくさおばちゃん
プロフィール

エッセイスト。雑誌・新聞社、住宅メーカーなどの編集業務に携わり、現在、エッセイストとして活躍。

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