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ぶつくさおばちゃんの独り言
「金曜日の妻たちの子どもたち」の巻
エッセイスト ぶつくさおばちゃん

江ノ島に行った帰り、小田急江ノ島線で中央林間へ、さらに東急田園都市線に乗り換えて渋谷へ出た。

平日だというのに、江ノ島線はあいからわらず、遠足帰りの小学生や、行楽帰りのおばちゃまグループ、東南アジアの留学生らしき若者たちで、車内の空気が弾んでいた。
静かな住宅街の風情と行楽客のおしゃべり。これが結構マッチングしているから江ノ島線は楽しい。おばちゃんのお気に入り路線の一つだ。

中央林間で降りて、東急田園都市線へ。途端に車内の雰囲気が一変した。
松山ケンイチ扮する映画「デス・ノート」の探偵“L”風の若者があっちにも、こっちにも。

「ワーッ、松山ケンイチだらけだ!」

と言ったら、同行の編集者に笑われた。

それにしても、髪の毛を四方八方に尖らせて、Tシャツにジーパン姿のLたちが、脇目もふらず一心に携帯画面に向かって親指をピコピコさせている姿は、やはり異様だ。

そう思っていたら、目の前にハードメタルの飾りをジャラジャラさせたホモセクシュアルな雰囲気の男性が、スーっと前の席に腰を下ろした。少し離れた席には、自信なさげに目だけをキョロキョロさせた、やせ細った男の子がじっと座っている。

たくさんある車輌の中のたった一輌なのに、まるで今の日本の若者図鑑みたいな光景が目の前にあるという現実。たまたまかもしれないが、やはり他の路線とは雰囲気がちょっと違う。

田園都市線と言えば「金曜日の妻たちへ」。小坂明子の「もしも願いが、かなうならぁ〜」なんてつい口ずさみたくなる、おばちゃん世代にとっては憧れの路線、だった。でも、これが“金妻たち”の子ども、いや孫世代なのかなぁと思ったら、ちょっと複雑。

 途中の駅で降りて少し歩いてみた。駅の周辺は、街路樹が舗道を覆い、大型スーパーや洋品店、雑居ビルばかりで、人家や下町のような商店が見当たらない。確かに街はきれいで洗練されているけど、なんだかよそよそしい。

「奥さん、今日はカツオが美味しいよ、買っていかない?」

「坊や、もう遅いから、早く家に帰りな」

そんなお節介やきのオジチャン、オバチャンの声がないと、街はやっぱり寂しい。

「だからおばちゃんは、金妻にはなれなかったんだよ。まぁ、どこから見ても、奥さまって感じじゃないけどね」

くやしいけど、さすが編集者。人を見る目は確かかもね。

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ぶつくさおばちゃん
プロフィール

エッセイスト。雑誌・新聞社、住宅メーカーなどの編集業務に携わり、現在、エッセイストとして活躍。

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