日本人ほど、季節を愛でる国民性はいないのはないでしょうか。だって、不思議だと思いません?桜の季節になると、数日前から、ニュースや天気予報で開花時期を報道し、花が咲き始めると、今度は日本国民こぞって、お酒と団子を抱えてお花見にと出かけていく。
そしてまた秋が近づくと、北から紅葉前線が降りてきたよとテレビに映し出され、薄暗い室内から庭のもみじの見事な景色を映した広告に、すっかり心を射止められ、「そうだ、京都に行こう!」と叫び、新幹線に飛び乗って行く。
こうした日本人の光景は、外国人の目からすると、なんとも不思議なものに映るのではないかしら。けれど、それが日本人の感性。私たちは、そうした美に対する遺伝子を先人から受け継いできたことを、もっと誇りに思うべきかもしれません。
さて、この日本人の感受性が見事に生かされているのが和の空間です。室内から外に視線が向くようにと大きな窓をしつらえ、そこに縁台を設けて、庭先に季節の花を植えること。季節ごとに変化する自然を、そのまま屋内に取り込んで、一体化した空間をつくり出すなど、日本家屋のアイディアには、そんな工夫があるのです。
たとえば、今の季節ならば紅葉。ビビッドな赤や黄色が空間に彩りをもたらせます。そして、春は桜のピンク。夏は明るい緑、冬には白銀というように、季節ごとの自然の色が効かせ色となって、室内空間に彩りを添えるのです。あたかもそれは、変化していく絵画、庭の光景は生きている絵に見立てて、窓枠はフレームです。その絵を生かすかのように、和室には、じゅらく壁や、畳のい草や、木肌色の柱など、グレイッシュで穏やかな色調にまとまっています。ですから、お正月のあでやかな和服姿もまた、和の空間においては動くアクセントカラーになるのです。
こうした知恵は、敷地が狭くなった現代の住まいにも活かしていきたいものですね。一坪でも半坪でも、ちょっとした庭をしつらえて我が家のお花見なんて、なかなかいいものです。