黒の語源は「し」。それが語尾変化して「くろ」。闇の色です。古代人にとって、漆黒の闇は恐怖。ですから、黒は「穢れ」や「恐れ」「不吉な」そして「死」の象徴でした。喪服が黒というのもそうしたところから来ているのです。
けれど、鎌倉時代になるとそのイメージは変わります。鎧や兜などの武具を身につける男の時代になって、黒は負けない、強い色として、もてはやされるようになりました。
さらに、禅宗とともに茶の湯文化がおこり、利休のわび寂びの美意識から、黒や鼠色は利休好みといわれる色になったのです。
また近年では1980年代、ファッション界で川久保玲や山本耀司などが黒=喪を一変させました。DCブランド界から発せられた黒は、一躍、洗練された都会的な色として、そのイメージを定着させていったのです。
その影響はインテリア界でも、起こりました。黒い家具や家電なども現れ、モダンインテリアに、黒は欠かせない存在となったのです。
そしてブームは、ごく最近にもありました。高級ホテルやマンションなどを皮切りに見られる黒と白のコントラスト。その流れが一般の住宅などにも使われたりしたのです。
けれど、団らんを大切にすべき一般家庭では、やはり「黒といった明度の低い色を大きな面で扱うのは控えたい」というのが私の意見。床や壁の一部にするときなどは、少し明度をあげて明るいグレーとして使いたいものです。黒い印象が強くなると、非日常的な空間ならばまだしも、毎日を過ごす空間では、心理的にも重々しい気分になってしまうからです。
また、黒に対して真っ白やガラスの素材を組み合わせると、コントラストが効いたクールな印象になりますが、無機質な空間は、常に緊張感を強いられます。ショールームなどではいいのですが、毎日を過ごす空間では疲れてしまいます。小さな子どもがいる場合などでは特に、そうした色や素材は避けた方が懸命です。どうしてもの場合は、白を木目調のものにすると素材感が出て、柔らかな雰囲気になります。実際、私のオフィスは黒いパーソナルチェアに対して、白い木目を生かした建具やテーブルにしてコーディネートしています。スタイリッシュでありながら、優しい空間です。