かつて、ある企業のオフィス空間の色彩設計をしたことがあります。そこは、京浜工業地帯にある広大な大手企業の敷地内。その一部にある倉庫を、別企業が借り受け、オフィス兼工場として、蘇らせるのが私の仕事でした。
もう、何年も使われていない薄暗い空間。隣接する壁が光を妨げます。下見の時、早々に切り上げてしまおうかと思うほど、ちょっと怖い、真っ暗な空間でした。
ですから、コンセプトは「明るく」「元気に」「快適に」、そして「ヴィヴィッドな色を使って欲しい」というクライアントの要望にも応えるようにと心がけました。そこで次のように空間をまとめました。
■アイキャッチになる壁面に色彩をつけ、動きを出す。
1階エントランスの正面に階段があります。その手前の袖壁を赤く塗装し、アイキャッチ効果を狙いました。また、エントランス近くの右脇にあるエレベーター室の内側の壁も赤く塗装し、1階のフロアを示す色としました。
2階のフロアカラーは青です。その色をアクセントとし、エレベーターの袖壁とエレベーターそのものの扉に色をつけました。
■動線誘導となる箇所に色彩を使う。
2つある階段室のいずれも黄緑色にしました。その色のあるところは、階段室と決め、誘導を促がしたのです。
また各作業室は、壁面の1面のみに、やや濃い色を使いました。濃い色は、次の部屋に続くサインです。というのも、この企業は福祉機器のレンタルを行う会社です。貸し出された車椅子がここに返却され、メンテナンスを施し、再び梱包され、貸し出されるというしくみです。その作業手順にそって、隣室の壁面色を濃くしていきました。
色が機能をもちつつも、アクセントウォールとして部屋自体に変化を出し、働く人々の気持ちにゆとりを与える、そんな作業室にしたいと考えました。
■手摺やブレス、柱の色
階段の手摺は赤。これは袖壁でつけた赤と連動させていますが、その暖色系の赤が、鉄素材の冷たさを排すると考えました。実際、空間に温か味と明るさをもたらし、この空間のアクセントカラーにもなっています。
また、作業室のブレスは、構造上、取り去ることができませんでした。部屋の途中に出るそれを、注意を促がす意味からも明確な色を施しました。
■外観の色
外壁の色もまた、明るさに注意を払いました。倉庫や作業場の多い敷地で、明るく楽しくなるような配色が求められたのです。ベースはイエロー系、敷地の一番奥にあってもよく認識できます。グリーンとブルーをサブカラーにして清潔感のあるイメージを表現しました。
働く場面にあるオフィスや工場。こうしたところでも色を有効に使って、快適に作業を進めたいものですね。