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60歳を過ぎたら、美しい景色に囲まれて、庭木の手入れや野菜や草花を育てて暮らしたい。という人生の第2ステージの夢を叶えるため、1年間程、休みのたびに車で夢に叶う物件を探して歩き、3年前、足柄山の高台の別荘地に理想以上の物件を見つけ購入したご夫婦から、60歳になったらこのリビングに囲炉裏を作ってほしいと依頼されていました。
24畳あるリビングの東南のテラス窓からは、三浦半島から真鶴岬に至る相模湾が一望でき、大きな瓢箪池や築山のある日本庭園と、ガーデンパーティー設備の付いた芝生庭園がある、敷地面積250坪、延べ床面積110坪(地下室収納室30坪を含む)の豪邸です。
築7〜8年ということでしたが、「老後は旅館に居るような気分で暮らしたい」という建て主の希望で、贅の限りを尽くして建てたそうですが、お金をかけ過ぎ3〜4年程で維持できなくなり、売りに出したが買い手が付かなかったそうで、家は中古とは思えないほど綺麗でした。高い物件なので不動産屋が時々家も庭も手入れをしていたようです。
この夫婦はこの上ない物件を手に入れ、 「仕事からここに戻ってきてこの景色を見ると、心が洗われる、贅沢かと思ったけれどここを買って本当に良かった 」と言って暮らしていたのですが、1年後ご主人が大腸癌に倒れ、1年の闘病生活の後亡くなられたのです。
そして今年になって奥様から、 「あれほど主人が気に入っていたこの家を、どういう形かで維持できないかと考えています。生活費は前住んでいた家の家賃とパン教室の生徒さんの月謝で十分なのですが、この家の維持費だけを生み出せれば維持していけると思うのです。私にあるのはパンと料理を作る技術とこの家だけです。それで何かを生み出せる方法を考えていただけないでしょうか。 」と相談されました。
そこで考えた末、このすばらしい景色の見える、広々とした空間で、手作りのパンと、手作りの野菜を使った料理を堪能するレストランを開くことを提案しました。
このレストランの特徴は
1、営利追求ではなく、ご主人が「心が洗われる」と言ったこの家を維持するのが目的
2、ここから見えるすばらしい景色と天井の高い広々とした空間が第1の売り物
3、北海道から取り寄せる極上の小麦粉で作る手作りのパン
4、趣味が高じて、この近くの山に移り住んで作っている人から分けてもらうチーズ
5、近所の畑で取れた野菜と庭で作っているハーブ
以上の特徴を生かすには、1日1〜2グループで10人までの予約のお客様に、この空間で一般の家庭では味わうことの出来ない、ゆったりとした昼食のひと時を、心ゆくまで堪能していただくというのがふさわしいと提案しました。
そして出来れば、これによって自分の生活が振り回されることのないように、レストランの開設日は週に1度か2度(必ず準備のために前日は空け、土・日・休日は帰ってくる子供さん達のために休館)にすることも提案しました。
奥様はこの提案に賛同され、そのためにこの家をどのように改装すればよいか、図面を作成してほしいと依頼された。
図面―1 現状のダイニングキッチンとリビング
・この家がかなり高額であったため、この家に合った家具や調度を揃える余裕がなく、今までの家で使っていたものを置いただけ。
・10畳あるダイニングキッチンだが、入り口付近に大きな冷蔵庫を2台と、北側の棚にオーブンとコンベックを置いてあるので、実質は中央の4畳半程度の広さしか使えず、捨てずにおいてあった古いダイニングセットを置いてある。
・リビングは広いので、それまで使っていたダイニングセット・ソファー・パーソナルチェアー・センターテーブル・炬燵・食器棚2台・パソコンデスク・テレビ・60cm幅のローボード3台を置いてある。
図―2 改装後のダイニングキッチンとリビング
・リビングの北側の壁から1800南側の位置に、天井より衝立を立て、給仕のためのサービスヤードを設け、そこに既存の冷蔵庫1台と食器棚1台を北側の壁に付けて置き、ローボード3台を南側の衝立の後ろに置く。
・食器棚1台はダイニングキッチンの、冷蔵庫のあった位置に置き、古いダイニングセットは捨て、リビングにあったものをダイニングキッチンに置く。
・オーブンとコンベックはダイニングキッチンの北東の壁に、2台重ねて置く。
・パソコンデスクはダイニングキッチンの南東の壁に置く。
・リビングには、ゆったりと食事を楽しんでいただくために、1000×1500の無垢材のダイニングテーブル2台と、肘掛付きのチェアー10脚を中央に置く。(これは2組の場合は離し、列をずらして置く)
・ソファーは衝立に付けて置き、食事の後くつろぎたい方はここに座り、眼下の相模湾を見ながらおしゃべりを楽しむことも出来る。
・出入り口とクローゼットの扉は、その他の家具と調和する物に替え、クローゼットの脇には、バックなどを置けるローボードを作り付け、端にしゃれたスタンドを置く。
・そのほか、リビング東側のローボード3台があった位置に、ハーブティー用やデザート用の食器とワイングラスなどを飾るローボードの食器棚を造り付ける。
・テレビは営業中に見えないように、コーナーの飾り棚を造り、その中に収め、扉で隠せるようにする。
・ダイニングキッチンとリビングの東側に、ガーデンデッキを設け、食事の後、眼下の相模湾の景色を見ながら、ハーブティーとデザートを楽しめるように、パイプ製のガーデンテーブルとチェアーを置く。サーブはD・KからもLからも出来るようにする。
なお、寒くない季節であればご希望により、南側のガーデンパーティー用の設備を使って、バーベキューの昼食も受けることができるようにする。
この提案における大工工事は、外のガーデンデッキを作るだけで、その他は出来た建具や家具と、既存の家具を図面の位置に置くだけなので、準備期間中に生活を変える必要がない。ということで奥様はとても気に入られ、後は予算をどう調整するか、集客をどのようにするかを思案しているところです。
奥様は、「これが出来上がり、成功すれば、亡くなった主人もきっと喜んでくれるだろうと思います。」とおっしゃっていらっしゃいます。誰とでもお話ができ、とても明るい性格でお友達が多いうえ、ファイトあふれる頑張りやの奥様ですから、きっとすばらしい人生の第2ステージをスタートさせることができると思います。
子育ての終わった第2の人生は、神様が与えてくれた自分のための充足の時なのかもしれません。一生懸命働いて作ったお金や、そして友達やその他いろいろな無形の財産を、自分の心の充足のために仕えたら、それは幸せな人生と言えるのではないでしょうか。
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