今回紹介するリフォームの事例は私のプランニングではありません。旅先の旅館で、自分の部屋にいるようなリラックスした心地よさを味わった空間が、2004年にリフォームして作られたと聞き、温泉旅館も伝統の良さを残しながら、次世代を見据えてここまで考えているのだと感激したので、ぜひこのページで紹介したいと思い、旅館の了解を得て紹介することにしたものです。
そこは、藤沢周平の代表作「蝉しぐれ」の最終で、郡奉行牧助左衛門となった文四郎と尼になるお福が再会する、漁師村のはずれにある温泉、山形県湯野浜温泉の老舗旅館「亀や」です。
創業明治6年という「亀や」は、古い温泉地に見られる鉄筋コンクリート10階建の大型旅館ですが、玄関脇の日本庭園の奥にある丘の上に、本館の4・5階とつながる、「亀」にちなんだ「竜宮殿」という純和風の2階建ての特別室棟が建てられています。ここは昭和天皇が泊まられた特別室のある棟だそうですが、2004年に、1階の特別室だけを残し、5階につながる2階部分を建築家吉村清孝氏の設計で、「千尋房」「万尋房」というイメージの異なるモダンな食事処にリフォームされています。どちらも外観の純和風から想像できないモダンな食事処ですが、古い梁を活かした落ち着きのある空間に仕上がっています。
このモダンな食事処で食事をしていただくために、本館5階の客室だけを食事処のイメージにふさわしい洋室にリフォームしたのだそうです。
そこで2泊の予定だったので、9階の和室と5階の洋室の両方に泊まることにしました。