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新・快適生活図鑑 第27回
高齢身障者のリフォームにかかわって気付いたこと その1
―行政の人と関わり方―

建築家 児島敬子

友人から、84歳になる義父が脳梗塞で倒れ入院した。リハビリ後退院したときに車椅子で生活するのに支障がないように改修したいので、改修プランを提案してほしいと頼まれた。

※ 友人から要望

・左半身が完全麻痺でリハビリによっても回復の見込みはほとんどない、ということを考えてプランニングしてくれれば、あとはすべて任せる。

・介助用のベッドと外に出る段差解消機は、介護保険でレンタルするので不用。
・ 助成金が出るということなので、市のリハビリテーションと福祉サービス課の担当者と、市の指定するNPOの建築士のチェックがあるので、その折衝をしてほしい。

ということだった。以前、環境福祉コーディネーター養成コースの授業を3年間受け持ったことはあるのですが、実際に高齢身障者のリフォームを初めてする私は、高齢身障者のリフォームが、行政のいろいろな関係者とこのように関わって行われるというシステムと、助成金の金額が、身障者対象が100万円、介護保険対象が20万円までということを初めて知ったのです。

※環境福祉コーディネーターを教えた経験からのアドバイスをしながら、友人の家族と話し合い、一緒に住んでいる家族にも精神的・経済的な負担が少なくて住むプランを考え、リハビリテーションの担当者に見せた。

※リハビリテーションの担当者は、この制度ができてから資格を持った方なので、高齢身障者のリフォームに情熱を燃やす30代半ばの男の方でした。彼のチェックは下記に記す内容でした。

・段差解消のスロープは、ハートビル法で決められた1/9以上にすること。

・トイレ・洗面・脱衣室は4畳あるから、トイレの間仕切りをせずに使えば車椅子の回転も自由にでき、2連の高い扉と間仕切壁を作る施工費もかからない。また左半身が完全麻痺の患者が手すりを持って2歩以上歩かなくて済むので転倒の危険性がなくなる。


この内容をうけて家族の方は動揺しました。「役所の方がそう言われるならばそうしてくだ
さい。助成金が出ないとか、問題がこじれてお爺ちゃんが帰ってくるまでに改修の工事が終らなかったら困る。工事許可が出るまで3ヶ月もかかった人もいるそうなので」と言われた。

それを受けて私は、段差解消のスロープは1箇所は1/9にしてもさして他の人の邪魔にはならないが、玄関の廊下への出入り口は健常者の動線幅が40センチ程度になって通りにくくなってしまい、スロープにつまずいて転ぶ危険性もある。またトイレの間仕切りに関しては、施工費がかかろうと、トイレ・洗面・脱衣室あわせて4畳ある中で排泄をするのは、臭いの問題だけでなく、健常者にとっても、身障者にとっても精神的にも落ち着かずストレスになるはず。ましてプライドが高く、84歳になってもすべての事を自分の意志で決める方で、帰ってきたらなるべく介助を受けず自立できるように訓練する、と言っている人にとって、介助者に見られて排泄をするのはかなりの屈辱的なことだと思うので、私が担当者にその旨を話し了解を得ます。と説得し担当者にその旨を詳しく説明しました。

※リハビリテーションの担当者の回答

確かに私は身障者が転倒する危険性をなくすことばかり考え、健常者のことや身障者の精神的な負担への配慮が欠けていました。でもこの方はおっしゃるようにプライドが高く人に身を任せず、自立しようとする意志が強いため転倒する危険性が高い。が脳梗塞をしたことで、左半身麻痺の状態で自立するにはどうしたらよいかというところまで頭が回らなくている。その点をご家族が理解し介助していただけるように、これからも私と一緒にご家族に助言してください。私のほうからもあなたの説明の内容を市の担当者に伝えておきます。

彼の回答は患者を思う情熱が感じられ、とても気持ちのいい内容でした。彼のアドバイスをご家族に話し、アドバイスも考慮してもう1度プランを作り変え、役所に提出しました。

※役所の担当者の回答

リハビリテーションの担当者から内容は聞いています。提案の内容はこれで結構です。私の方は助成金を出すほうなので、見積もり金額が問題なのです。

改修工事に設計料や打ち合わせ料等は認められないので、その辺を考慮して見積もりを出してください。提案の主旨はNPO建築士にもお話しておきます、という回答でした。

見積もりは既存の設備機器等の値引き金額を設計料や打ち合わせ料に当て作成して提示した。

※現場での担当者とNPO建築士との打ち合わせでのNPO建築士と担当者の回答

・設計内容に問題がありません。見積書に関しては、設備機器が多いので、よその業者さんが値引きをしているということもあり、定価のある設備機器はいくらかでも値引きし、設計料打ち合わせの費用は、そのほかのところで調整したほうがよいかと思います。

・申請書類の提出の流れは、福祉サービス課―リハビリテーション―福祉サービス課なのですが、それでは許可までに時間がかかるので、直接にリハビリテーションに送り、福祉サービス課に戻す形で結構です。リハビリテーションに送る前にFAXで見せていただいて目を通し、電話で打ち合わせできれば結構です。

このように関係者のアドバイスや配慮をいただいて、友人のお義父さんが戻られるまでに、工事が完成できる予定がつきました。

私が関わった方がたまたま柔軟性のある良い方だったのかもしれませんが、役所の方も同じ人間です。依頼や相談をする側も「役所の人のやることは時間ばかりかかって不親切だ」というよく耳にする風評から、面倒なことにならないようにと自己規制することや、自己の利害にとらわれることなく、同じ人間として一緒にどうにかしてほしいと情熱と勇気を持って訴えれば、立場・立ち場の知恵を出し合っての速くて好い方法が見つかるということがわかりました。

物事の流れを澱ますのは、それぞれの立場の保身と利害を考えた自己規制や情熱と勇気のなさで、お互いに情熱と勇気を持って接すれば流れは活性化するのではないかと思いました。

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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 児島敬子
プロフィール
デザイナー・建築家。1983年にトータル・ライフコーディネートスタジオ「ZAZA」を開設。1988年、ヒューマンスケールで考える住環境設計を加え、インテリア建築デザイン事務所「ZAZA―YOU、CO」を設立。家が「ゆったりと豊かな時を過ごせる心のすみか」となれるスペース作りを目指し活動を続けている。著書に「インテリア製図の描き方」など。

「入門 インテリアコーディネーター かんたんインテリア製図の作り方
――ヒューマンスケールに基づく快適空間の考え方
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