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新・快適生活図鑑 第28回
高齢身障者のリフォームにかかわって気付いたこと その2
―真摯さ・謙虚さ・情熱を持った協働作業は
       よりよい結果が生まれる―

建築家 児島敬子

高齢身障者のリフォームは、リハビリを担当する理学療法士との協働作業が必要となります。高齢身障者のためによりよいリフォームができるように、お互いの専門的立場を尊重し、その上で、忌憚のない意見を出し合い、協働作業を進めていくことが大切だと痛感しました。

友人の家族は、左半身麻痺になった父親は車椅子でも自立は無理だと思うので、介助者が車椅子を押す形でリフォームしてほしいとのことでした。家族との打ち合わせの結果私が提案した洗面・トイレの図面は図−2の通りです。(図−1は友人が描いた現況図)。

役所から、「助成金対象の高齢身障者のリフォームは、贅沢・華美は避け、標準仕様で、必要最小限の工事で行ってほしい、そのチェックは役所が依頼したNPOの建築士にしてもらいます。」と言われていたので、その条件に従い下記の事項を基にこの提案図を作成しました。

1、トイレのタイルの床は壊し、拭き掃除のしやすい重歩行用の長尺シートにする。

2、勝手口ホール・廊下・洗面所の床は、3年程前にリフォームし、無垢材のフローリングが貼られているのでそれをなるべく残し、その突合せ部分の収まりがきれいになるようの間仕切壁と建具をいれる。

3、便所の給水・排水管も大きく動かさずにする。

この提案を担当の理学療法士に提出したところ、このように訂正してほしいと図−3・4
のファックスが届いた。

友人の家族は、「問題がこじれ長引くと困るので、後で直せばいいから理学療法士の言うようにした方がいいのではないか。」と言ったが、私は、理学療法士の提案には建築士の立場からすると不都合な箇所がたくさんあるので、担当の理学療法士と直接話をしたいので、私に全権を託してほしいと申し入れ了解を得た。

・理学療法士の提案の不都合な箇所

1、便座の前250離した位置にL型の縦の手すりをつける位置は洗面所前の窓で、壁はない。

2、左の壁の幅は1000で、全長1300の車椅子用の洗面器を設けることはできない。

3,約4畳のスペースで、間仕切壁と建具がなく排泄をするのは、臭いだけでなく、普通感覚の人間ならば、身障者・健常者問わず精神的に不安定になり快適な排泄ができなくなる。

4、既存の床と新しい床の突合せ部分の収まりはどのようにするのか。

以上のことを理学療法士に電話で話した。彼の回答は下記の通りでした。

・私は建築は詳しくないのですが、この患者さんの場合、右手しか使えないので、便器の正面か右側から近づく形でないと転倒の危険性があるので、この形がいいと思ったのです。

・そうなると洗面器は西側の壁に縦に設けるしかなく、また便器から洗面器に移るには、車椅子を回転せねばならない。間仕切壁と建具があるとそれができなくなると思ったからです。しかし、間仕切壁と建具がなくては、確かにあなたがおっしゃるとおりだと思います。

・洗面器の幅は、1300なくても1000〜1200程度あればいいです。ただし、L型手すりの縦手すりは、便器の前250離れた位置に設けてください。

私は彼の回答を取り入れ、建築士の立場から、この高齢身障者と健常者の家族にとって快適な洗面・トイレの提案を考え、それを見せることを約束して電話を切った。

理学療法士に送った再提案図面が図―5の平面図と図−6のアイソメ図です。

翌日理学療法士から電話が入った。

・今あなたから送られた図面を原寸で床に描き、実際に車椅子に乗って動いてみました。

・これならば、右手で手すりに掴まって2歩以内で便器に座れそうです。転倒の危険性はかなり低いと思います。

・また左側に転倒防止のための跳ね上げてすりを設けたことはとてもよいと思います。

・便器のスティックリモコンも高齢身障者には使いやすいだろうと思います。

・洗面台もこの形ならば、トイレから回転することなく移ることができ好都合だと思います。

・ただ部屋に戻るときの回転はこの幅で大丈夫でしょうか。

という内容でした。車椅子の回転はこの幅でできなくはないですが、トイレの戸にぶつかるのが心配ならば、戸は開けたまま回転すればよいです。ウォシュレットにはオートパワー脱臭機能がついているので、次に使う人が不快に感じることはないと思います、と伝えた。

以上のような経過を経て、8月半ば役所の担当者と理学療法士の検査を受け、高齢身障者の洗面・トイレのリフォームは完了しました。検査の後役所の担当者が、改修前とは見違るように明るい広くきれいな洗面・トイレになりましたね。とお褒めの言葉をいただきました。

これは私だけの力ではなく、担当の理学療法士の方に患者さんを思う熱い気持ちがあったからこそ、建築士のわたしの意見を真摯にそして謙虚に聞いてくださり、協働作業で患者さんにとって安全で快適なリフォームをしようという姿勢を示してくださったからだ思います。お互いのこういう姿勢で協働作業をすればよりよい結果を生まれるのだと痛感しました。


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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 児島敬子
プロフィール
デザイナー・建築家。1983年にトータル・ライフコーディネートスタジオ「ZAZA」を開設。1988年、ヒューマンスケールで考える住環境設計を加え、インテリア建築デザイン事務所「ZAZA―YOU、CO」を設立。家が「ゆったりと豊かな時を過ごせる心のすみか」となれるスペース作りを目指し活動を続けている。著書に「インテリア製図の描き方」など。

「入門 インテリアコーディネーター かんたんインテリア製図の作り方
――ヒューマンスケールに基づく快適空間の考え方
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