| 民家と呼ばれる町家や農家の建物は、実用の面から土間の役割が重要視され、土間面積が建物の1/3〜1/2を占めるものも多く見られた。
土間は、町家においては、奥座敷や裏の倉への通路、馴染みの客の接待の場、店を閉めた後の物置き場としてなど多目的に利用され、農家においても、雨の日の農作業場、近所の人との雑談の場、人寄せの時の調理場としてなど、やはり多目的に利用されていた。
臨機応変に多目的に利用できる土間は、畳の部屋同様に日本特有の文化だと思います。
この昔の人の生活の知恵から生まれた土間の利用方法を、現代の生活の中に活かし残していきたいと考えます。
そこで今回は、古い農家の土間を有効活用して、現代の生活に合うようにリフォームをした事例を紹介したいと思います。
※依頼主は夫が定年退職をし、老後を自分の育った田舎の懐かしい家で、のんびりと晴耕雨読の生活を送りたいというご夫婦。
・基本的には、この民家の形を変えずに、これからの暮らしにあった形にリホォームをしたいという要望。
図―1 before
・両親が丁寧に使っていたので保存状況はよく、両親がなくなってからも、年に3〜4回は来て風通しをしていたので、すぐに住める状態ではあった。
・土間は、にわと呼ばれる土をたたいて固めただけのたたきなので冬はとても寒い。また座敷は土間からの湿気が上がるのを考慮して高く作られているので、式台が1段あっても座敷に上がるのは高齢者には大変であった。
・晴耕雨読の生活といっても、東側の畑で自分達の食べる野菜を作るだけなので、農作業の道具は畑の脇に小さな物置を作れば十分なので、入り口脇の納屋は必要がない。
図−2 after
・既存のたたきの上にコンクリートを打ち、その上にアンチーク調のタイルを張った。こ
れで以前の土間より20?高くなった。玄関前と裏のタイルはそれより5?下げた。
・南側の土間部分には、大きなテーブルとアームチェアーを置き、このスペースを近所の人との雑談や、泊りがけで来る子供達の家族や友人との食事や語らいの場にした。
・北側の土間は、くどをそのまま残し、くどの脇に人寄せのときの調理がしやすいように、小さな流しの付いた調理台を設け、前壁には大きな吊りと棚を設けた。
・通常使うキッチンは、配膳用卓袱台の置いてあった板間を床暖のにし、そこに間仕切壁を設けずにオープンにした。
・東南の納屋は泊りがけで来る子供たちの家族や、友人達のゲストルームとした。
・便所は外から出入する必要がなくなったので、男便所をなくし、ゲストルームからも行かれるようにした。
・浴室は改装して10年もたっていないのでそのままにして、浴室の東側にサンデッキを
設け、昼間は物干しに、入浴後は夕涼みに使えるようにした。
・玄関と、勝手口の建具は障子を木製のガラス戸に変え、雨戸は既存のものを使った。
・座敷は基本的にいじらず、北側の開口部だけを障子の外にガラス戸と雨戸が付くようにし、寒さを防げるようにした。
・北西の部屋の押入れは1間だけ内部をクローゼットにした。
・なおご夫婦の寝室は、育った頃はお客様の寝室であった床の間と仏壇のある座敷にしたいというご主人の要望なので、便所が遠くなるため、廊下の西端に洗面と便所を別棟で
増築した。
・ゲストルームだけ壁掛け式の冷暖房機を設けたが、土間は天井が高いので暑さ対策はあまり必要がなく、寒さ対策としてゲストルームの入り口脇に大型のファンヒーターを置いた。また冬はくどに薪をくべ湯を沸かし暖炉のように使うことにした。
・座敷も暑さ対策の必要があまりなく、極暑のときだけ扇風機を使うことにし、自然の風の涼しさを味わうことにした。冬は既存の炬燵や火鉢のほかに小型のファンヒーターを必要な箇所に置くことにした。
リフォーム後ご夫婦は、昼間は間仕切りの建具をいつも開け放って生活をしている。南の縁からの日差しが1日中入り、また気候の良いときは外回りの建具も開け放つと、涼しい風が東西南北に通り抜けていく。
広々とした開放感と、自然の恩恵をしみじみと感じ、いつのまにか心がゆったりとしてきて、いろいろなものが新鮮に目に入るようになったそうである。
建物が人の心にこんなにも影響をおよぼすものだということに、ここに住んで初めて
気付いたそうで、住む家に愛情を持って暮らさなくてはと思われたそうである。
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