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シロアリ騒動 リフォームあたふた記10
タイル工事で人生を楽しむO氏はリフォームの達人か
住宅ジャーナリスト・岡田 憲治

●気分は二世帯住宅でドア2つ

パチンコ屋で商売繁盛のタイル屋の主人が朝早くからやってきて、セメントをシャカシャカこねる。シャーと塗って、タイルを貼っていく。

「同じ色のタイルというのはないんだよなー。でも、このちょっとしたこの差がいいだろ」と言う。勝手に決め付けてと思うものの、そう言われると、何か浴室がこれまでと異なり輝いて見えてきた。どうせなら富士山を描いてもよかったかなと考えるO氏であった。

「このタイル、昔、おれが貼ったんだよな。いい仕事しているよな」
と自画自賛もする。

タイルを貼るのは出入り口のドアを取り外し、壁にしたところ。ドア下の根太が腐ってシロアリが発生したため、塞いでしまったのである。

「2つで入り口があるというのは変わっているよな」と主人。

「ええ……」とO氏。この小さな浴室でと言いたいんだろうな、とO氏は想像していた。

その話は面倒だからつついてくるなよな、と思っていると――。

「どうして2つ作ったんだっけ」と聞いてきた。ああー。
「えー。便利ですから」、そう答えるO氏である。

ウソである。この小さな浴室、右から入ろうが左から入ろうが、時間にしてほんの1秒2秒の差。おーいと呼べば、なんですかー、とこだまするような大旅館の浴室とは大違いなのである。

小さな浴室に2つのドア――そのワケとは、前回リフォームしたときのことにさかのぼる。

その頃はO氏のうるさ型の父親が健在であった。何かと干渉してくる人であった。

「玄関も別々、トイレも別々、浴室も別々という二世帯住宅はいいよなー」
「いいわねー」
「いいねー」
「金がないから建て替えられないねー」
「そうねー」
「せめて気分だけ二世帯住宅」
「いいねー、そのキャッチフレーズ。採用だね」
「浴室1つでもドアは別々」
「いいねー。傑作だね。温泉に行ったみたいだねー」
「温泉ではなくて銭湯です」
「銭湯でもいいねー。神田川だねー」
「かぐや姫ですか」

とかいったリフォーム検討の会議を開いて、気分だけ二世帯住宅でドアを2つにしたので
ある。

●リフォームの楽しさは生活が変わること

タイルを貼り終えると、シートをテープでとめていった。

「これで風呂に入っても大丈夫だから」

そう言って帰っていった。

ショックだった。シートで覆われた浴室――これはなんだとO氏は叫んだ。

リフォームの楽しさは生活が変わることであり、刺激が与えられることである。風呂に入れないというのは不便ではあるが、その不便さが生活に刺激を与えてくれる。そう、その刺激から、温泉に行くという行動に出たO氏であった。

工事が早く終わったことはO氏の楽しみを奪うことにもなった。ああ、残念だとO氏はため息をつく。その日、O氏の日記には「タイル工事終わる。これで温泉の楽しみも終わる。

ああ、これもまた人生」と書き記した。

リフォームをプラス発想で楽しみに変えていくO氏はリフォームの達人か。いや、本音は工事が長引けばまた温泉のただ券をもらえるのではないかと、さもしい根性のO氏なのであった。

いや待て、自腹をきってO氏は銭湯へと行った。そして熱い湯につかり、鼻歌気分であった。もしかしたなら、O氏は本当のリフォームの達人なのかもしれない。いや人生の達人なのか。

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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 岡田憲治
プロフィール
住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。

http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma/
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