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プライバシーとリフォーム 
その16
狭小住宅とプライバシーを考える
住宅ジャーナリスト・岡田 憲治

●28坪の狭小住宅

建築家M氏は狭小建築家と呼んでもいいほど、狭い敷地に家を建てることが多い。先日見せてもらった多摩の家は敷地が約28坪。もとは60坪近くあったところを半分にして売り出していたのを買ったようだ。駐車スペースをとって敷地面積ぎりぎりまで使って建てたので庭はちょっとしかない。でも、隣が公園なので借景できるのがいいところ。その家の床面積は1階と2階は約11坪ずつでロフト付である。

狭小住宅で28坪というのはまだいいほうで、なかには10坪、20坪という人もいる。東京圏での建築は厳しいのである。


●池波正太郎おすすめの引き戸

その狭小な住宅、引き戸を多く採用している。狭小住宅では引き戸というのは定番なのである。狭い家の中のスペースを有効に使うにはドアはじゃまになるのだ。

「鬼平犯科帳」の作家・故池波正太郎氏は自分の家を建てたとき、家の中の戸はすべて引き戸にした。その理由をこう書いている。

『せまい間取りへ、たくさんの引き戸を設けたのだから二重三重の敷居をつかるわけだし、工事に手間がかかるけれども、できあがってみると、小さな家には、これほど便利なものはない。ドアを開けるときの空間が、不要になるからである。

引き戸や畳、押し入れなど、日本のせまい風土と家と習俗とに、ぴたりと似合った独特の家の造り方というものが、長い年月をかけて完成されていたものを、近年の日本建築は忘れている。

都会のマンションやアパートの、せまい住居についているいくつものドアは、何かにつけて人の暮らしの邪魔をする。そして、小さな部屋からはみ出してしまうような応接セットや食堂セットも、人が住む空間を我が物顔に占領してしまう。』(一年の風景 朝日文庫)

日本の狭い家には昔から引き戸は常識であった。それが先人の知恵であったと池波正太郎氏は言っていたのである。

●狭小住宅にはゆるやかなプライバシーがいい

多摩の家ではスクリーンで間仕切りをしていくスペースもあった。スクリーンも引き戸と同じように空間を活用できる道具だからだ。しかし――。プライバシーはと思う。「小さな子どもの空間」なのでとM氏は言った。

狭小住宅にガチガチしたプライバシーの概念は似合わないようだ。廊下を設け個室だらけにしたらスペースは足らなくなるのである。どうしてもゆるやかなプライバシーとなり、家族が一体となった空間づくりになるようだ。その家も個室は1部屋、あとはオープンな空間である。キッチン・リビング・ダイニング・ロフトの書斎&子どもスペースは1つの世界で楽しむ空間としている。

●狭小住宅だから通風・採光の知恵が必要

狭小住宅は外観にも1つのルールが見えてくる。隣同士が接近しているので、窓を小さくしたり無くしたり、ルーバーで目隠ししたりする家が多い。しかし、壁で囲ってしまっては、通風・採光が採れなくなる。多摩の家は幸いにも隣を気にしないでもよい立地条件であったが、採光はたっぷり採ろうと、ガラス張りを多用して、目隠しにはスクリーンを取り入れた。M氏は外壁にポリカーネイトを使ったこともある。透過性素材なので採光が可能なのである。

狭小住宅でリフォームするときは、池波正太郎が語っていたように、狭い日本の家づくりの伝統と知恵を思い浮かべつつ、いかに家族が一つになって楽しく暮らすのかを忘れてはいけないようである。

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住宅ジャーナリスト 岡田憲治 岡田憲治
プロフィール
住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。

http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma/
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