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シロアリ騒動 リフォームあたふた記6
薬剤処理は安全なのか。環境に身体に悪くはないのか!

住宅ジャーナリスト・岡田憲治


●見積もりの内容は・・・

見積価格、約100万円をもう少し、細かく見てみよう。

見積書に書かれていたシロアリ防除というのは、床下の木部のシロアリ食害を防ぐために、木材と土壌を薬剤処理すること。それが坪当り10,500円。

シロアリ巣の根絶というのは、シロアリをそれこそ根絶させてしまおうという作業。シロアリというのは庭などに生息しているということだが、まず餌をカップに入れて誘き出し、シロアリの存在を確認したところで、今度は薬剤を入れておいて死滅させようということ。地面に生めておくカップはあちこちいくつか設置するようだ。この方法はベイト(毒エサ)法と呼ばれている。この単価が4,725円。ただ、管理費として毎年31,500円かかると言われた。

竹炭というのは、床下に炭を敷き詰め、結露、湿気を取り除こうというもの。いま流行りである。脱臭効果やマイナスイオンが発生し、空気を浄化するとも言われている。こちらが単価20,400円。

●炭を敷く効果は・・・

「シロアリの防除は高いか安いかは置いておき、これはやらないとダメでしょ」と妻のB子。

「いや、そうとも言えない」とO氏。

「この間、ある住宅会社の人に話を聞いたら、シロアリ、薬剤を使うなんてとんでもない、柱にツバでも醤油でもつけとけばいいんです。そう言うんだ。薬剤を使っても効果は疑わしいし、そもそも床下の環境を良くしておけばシロアリは近づけないと言うんだな」

O氏は素直な人であった。だから、東にこういう意見があればウンウンと頷き、西に違う意見があってもオーオーと頷いた。このときは住宅会社の人の話が耳にいっぱい入っていたのである。

ウーンと暫し、沈黙の時間が続いた。

「よーし、結論がでないね、次にいこう」とO氏の息子。O氏に似て、かるい感じだ。だがO氏は「何が次にいこうだ。結論は出す」と言った。

「まあまあまあ、次いこう」とB子も言う。みんなかるい家族なのであった。

「シロアリの巣の根絶だけど……」

「そう、これもね、ある人がこう言う。床下にシロアリが近づかなければいいわけで、殺す必要はない、それに殺すと言っても世の中からシロアリがいなくなるわけではない。そんなことはムダですと。この人、環境にうるさい人なんで信憑性のある発言だなー」

O氏はそう言う。

「そうだ、イラクの戦争も同じだ。テロを根絶させると言っても力で押さえつけてもだめでしょう」と息子。

 シロアリとイラクの戦争。深いなー、哲学的だなーとO氏は感心する。そして、

「いい意見だ。シロアリ撲滅反対。これはやらない」

と言った。すると、B子も「19万円消えるわけね。賛成」と喜び、かくしてシロアリ巣の根絶は消去された。

さて、もう1つ、竹炭を敷くかどうかが論議された。テレビなどでも炭の効果など放映されていて、炭に対しては入れてもいいかなーと思うO一家なのであった。だが、ちょっと待て、と一声かけたのはまたしてもO氏。

「先日、炭について勉強してきました。炭ならばなんでもいいというわけではないようです。竹炭と木炭に霧吹きでシューと水を吹きかけたところ、どうです竹炭は水滴が垂れているでしょ、吸収が遅いのです、と言っていました。なるほどと感心したんです」

「ということは竹炭はダメで木炭ならいいということになるのだろうか。備長炭は」

と息子。するどい、とO氏はほめた。

「どうもね、あれがいい、あれが悪いとは一概に言えないようですね。木炭も種類によって違ってくるようだし……」

「ということは……」

「私にはわかりません。業者それぞれ自分の製品だけがいいと言っているので」

わからないもの、不安なものは「持たず」「作らず」「買わず」と非買3原則がO一家の信条だった。だから結論は早かった。

「これは取り止める」

●天然物だけというが・・・

討議は続く。残されたのはシロアリの防除処理である。ところでとO氏の息子が質問をした。

「シロアリ駆除というと農薬を使うのだろ。シックハウスの原因ではないか。環境汚染ではないか。そんなものを使うのは問題だ。僕はシックハウスになりたくない」

「私もだ」

「まあまあ」

確かにシロアリ駆除の最大の問題は有機リン系農薬のクロルピリホスなど農薬を使うことにあった。身体にも環境にも良くはなかった。そこで、2000年にクロルピリホスを白蟻防除への使用を中止、その旨が伝えられた。

では、今回、O氏の床下処理に使用される薬剤とはどんなものであるのか。

「ヤシ油脂脂肪酸(カプリン酸)、ウコン、ヒバを使うという。石油系溶剤は使っていないというんだがね」

化学系は使用していないということだが果たして大丈夫なのか。

その日の結論は持ち越された。もっと調べてみよう、聞いてみようとデータを集めた。

O氏は結構マメなのであった。天然なものというのもいろいろあった。「そんなもの」と言う人もいた。迷った。

業者からも電話。「どうでしょう」と。

2週間ほどして結論を出した。

「1度やってみよう」

O氏はシロアリ防除の処理だけをやることにした。実験だ。まあ、安心料ということかとO氏はつぶやいた。約30万円の安心代であった。


住宅ジャーナリスト 岡田憲治
岡田憲治
プロフィール
住宅ジャーナリスト・NPO法人埼玉住まいの情報ネットワーク代表。辛口『野次馬住宅時評』を発行。著書に『住宅のお値段・原価の秘密』『住宅業者の良し悪しがピタリわかる本』『住まいたちの半世紀』など。近著『昭和の住まい学』。

http:// www.tcat.ne.jp./~yajiuma/
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