| ●床下無料診断受付中!
シロアリ発生で、さてどうする。するとO氏の妻B子が言った。「この前、S協のチラシにシロアリ駆除のことが載っていた」。
「春から初夏にかけて、シロアリの動きが活発になります。」
「住まいの床下はシロアリが好きなジメジメ!?」
そんな文字が並ぶチラシをO氏は読んだ。すると、床下無料診断受付中と書かれた文字に目が留まり、見てもらうかと言った。
タダというのには少し抵抗もあった。「ただより高いものは無い」ということわざもあるではないか。無料診断といっても、所詮は営業の範囲、タダで診断してもらうと断りにくくもなる。それに、シロアリの診断といって床下に入りシリアリをばら撒いて、いました、いましたと偽る業者も多いという話もある。
できることならお金を払ってもきちんと診断してくれるところに頼みたいところだが、そうしたところがない。自治体にそうした窓口があればいいが、自治体も業者を紹介するだけとか、あまり役には立たない。
どうすべきかと話し合った結論は、S協ならばということだった。そんなに悪さはしないだろうと判断したのである。
●床下にもぐるため4箇所ほど穴を開けてもらいたい
電話をかけてS協から調査員H氏がやってきたのは20日以上の先の5月の末。この時期は忙しいのある。調査員といってもS協の人ではなく提携先のシロアリ業者。その調査員、朝8時45分に来て、さあやりますからと言う。
作業服に着がえたH氏が床下にもぐる場所はありませんかと聞くので、和室へとO氏は案内した。8畳の和室、さてどこかに板を外すともぐれる箇所があるはずだが、O氏はすっかり忘れている。しかしO氏は「ここです」と自信ありげに指で示した。
畳を起こしてみるが、板ははがれない。すみません、すみません、こちらでしたとO氏は隣の畳を自分で起こそうとすると、「いやいや、やりますから」と軽かる畳を持ち上げて立てかける。内心、ホッとするO氏。重いものを持つのが苦手なのである。持てるとすてばボールペンくらい、O氏はもやしみたいな男だった。
だがその畳も違っており、O氏に振り回されて、結局、全ての畳を移動させたH氏、嫌な顔など見せずに、「では行ってまいります」とデジカメ片手にもぐっていった。すごいなー、地底探検みたい、それともトム・ソーヤの冒険かなと、H氏の調査にワクワクするO氏であった。O氏はどちらかというと暢気な男なのである。
彼は地底探検に行っちゃったし、テレビで見るかとO氏は思った。だが、次の瞬間、その間何秒であろうか、そんなに間はなく、「いかん、いかん、人ごとのようにお任せでやってはいけない。これで私は失敗しました、そんなことを何度も経験しているではないか。リフォームでお任せは絶対にいかん」と思った。
暢気なO氏であるが、いざとなるとたくましい。いい発想をすると自分で自分をほめるO氏であった。そして、和室で待機。腕を組んで、H氏の探検を見守るのであった。その姿、武田信玄か上杉謙信のよう、と想像するO氏。やっぱり暢気である。
すると、地底から、いやいや、畳のしたから声がした。なんだなんだ、どうしたどうした。O氏はあわてものである。以前、近所の人が床下にもぐったところ、青大将がとぐろを巻いてワッと叫んだという話を聞いたことがあるので、さては何者かが出没したのかと思い、「どうかしましたか」と床下を覗き込んだ。
ウワッー、と叫んだのはO氏である。覗き込んだとき、H氏がヌッと顔を出したのである。おおげさに腰が抜けたO氏、情けない男である。
地底から戻ってきたH調査員がこう言った。
「途中、基礎がじゃまして向こうに行けないのです」
またまたO氏は想像する。そう、そこは失われた魔宮、インディ・ジョーンズになって前へ前へと進みのであるが、大きな岩が立ち塞がる……。
「Oさん、どうしましょう」とH氏の声で我に返ったO氏、「どうするって、どうすれば……」と聞き返した。すると、H氏、「床に穴をあけてもらいたい。それもそことそこと4箇所ほど」
それを聞いたO氏、気絶はしなかったが、目が安定してはいなかった。
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