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リフォームかわら版
その9
バリアフリー住宅は
心とからだを元気にする
ゲスト
中條  好久 氏
有限会社中條工務店 一級建築士)

高戸 憲一 氏
株式会社高戸工務店 一級建築士)
                 

写真左が高戸さん、右が中条さん。

バリアフリー住宅は五感にも優しい

―― 今日は工務店の二代目で一級建築士のお二人に、バリアフリーのためのリフォームについてお話を伺いたいと思います。まず、営業エリアを教えてください。

○中條 私は、横須賀、逗子、金沢区を中心に、横浜方面から三浦半島一帯をエリアにしています。

○高戸 私も基本的には大塚、鎌倉、逗子が中心です。横浜も多いですね。お付き合いをしている設計事務所さんとの関係で、大田区方面の仕事もしています。

―― 最近はどのようなリフォームが多いですか。

○中條 今日のテーマではありませんが、介護保険を使った住宅改修や、団塊世代の方のリフォームの依頼が結構多いです。

○高戸 団塊世代の方に関しては、今は元気だけれども、将来高齢になった時のことを考えて準備をしておきたいという方が多いです。例えば、古い家に住んでいると敷居の高さが3cmという部屋がたくさんありますから、敷居を平らにするとか、住宅の量産時代に建てられた建売住宅には扉だらけの家というのが結構あって、ドアを引き戸に変えてオープンに使いたいといったケースが増えています。

―― 水回りについてはどうですか。

○高戸 浴室のリフォームが多いです。タイル貼りの古い浴室をユニットバスに変えたいという方や、そのユニットバスも、出入り口に段差のないバリアフリータイプを希望される方が増えています。他には、将来、手摺りを付けられるように、壁の中に補強用の下地材を入れて下さいという方も結構いらっしゃいます。

―― 年齢と共に握力も弱くなりますからね。

○中條 細かなところでは、ドアノブをレバーハンドルに変えて欲しいという要望もあります。コンセントは通常の位置よりも高めに、逆にスイッチは低めにした方が使いやすいようです。あと、高齢の方で、視力が衰えてきたので玄関や階段まわりを明るくしたいという方もいます。

―― バリアフリーというと、段差や手摺りといったものに目が行きがちですが、五感からも考えていかなければいけない訳ですね。結構、奥深いですね。

○中條 例えば音に関しても、隣の部屋の音が聞こえない方が良いというのが普通ですが、お年寄りのいるお宅では、吹き抜けを設けるなどして、むしろ、ある程度の音や気配が伝わるようにした方がいい場合もあります。

―― なるほど、それはいい提案ですね。


時には実用重視と割り切ることも大切

――  お二人は、将来に備えて家の中を見直したいというお客様には、どのような提案をしていますか。

○中條 まず、最初に建物をコンパクトにしましょうという事をお話しします。間取りに関して言えば、夜トイレに行く時は動線が短い方が便利で安心ですから、寝室の近くにトイレを移すとか、洗面・浴室などの水回りも家の中心部に近いところに配置する事を提案しています。

次に段差の解消です。高戸さんが言ったように、3cmの段差でもお年寄りはつまづいて転倒することがありますから、できるだけ床面を平らにすることを勧めています。

もう一つ、これはとても大事なことですが、家の中に極端な温度差を作らないことです。日本の古い住宅は温熱環境が非常に悪く、特にトイレや浴室、脱衣所といった場所では、急激な温度差で脳溢血を起こして倒れる方が少なくありません。いわゆる一局集中の暖房は止めましょうということです。

この温熱環境については、冷暖房選びから始まって、各部屋の扉を引き戸に変える、あるいは間仕切りを出来るだけ少なくして、冬は暖かい空気が家の中全体に行き渡るようにする。さらに予算的に可能であれば、窓のサッシは断熱性に優れた二重サッシに取り替えましょうというように発展させていきます。

―― 水回りの配置、段差の解消、温熱環境の改善。この3つが基本ということですね。段差はやはり危険が大きいですか。

○中條 実際、私の祖母が段差に躓いてケガをしているので、気になりますね。

○高戸 段差についてはもう一つ、僕のお客様で家の中で車椅子を使っている方がいらっしゃって、段差解消用の敷居に直したことがあります。この時、継ぎ目を綺麗に仕上げようと思うと、どうしても3ミリほどの出っ張りが出来てしまうのです。後でお客様から、「この3ミリの段差が車椅子にとっては結構大変なの」と言われ、当事者にとって、段差はとても切実な問題なのだということを知らされました。

確かに見た目に美しい方がいいし、僕ら建築士に求められているのも、使いやすさプラス美しさだと思うのですが、お客様のことを第一に考えると、ちょっと見た目は悪くても、実用重視でと割り切ることも大事なことだと実感しました。

―― お年寄りで車椅子を使っている方は結構多いのですか。

○高戸 たくさんいらっしゃると思いますよ。車椅子までいかなくても、歩く時に杖が離せないという方も多いと思います。

―― 引き戸の話が出ましたが、ドアから引き戸に変えるのは大変だと思うのですが。

○中條 今は、ドアを外して壁に簡単に引き戸を取り付けられる商品があって、かなり普及しています。

○高戸 確かに、きちんとした引き戸を作るとなると、柱を抜かなければいけないとか、構造的に難しい部分もありますが、この商品を使うと壁に取り付けるだけで済みます。その代わり、部屋の内側や廊下に戸袋がせり出したりということはありますが、それを差し引いても、引き戸というのはメリットがあると思います。

―― 簡易的なものというと、安っぽい感じになりませんか。

○高戸 仕上がりも綺麗で、建売住宅やハウスメーカーでもよく使っています。

手摺りの取り付けには立ち会いを

――  手摺りを取り付ける時に気をつけたい事は何ですか。

○中條 手摺りを取り付ける時は、握るのか、支えるのか、という問題が出て来きます。お年寄りの中には握る力の無い方が結構いますから。

工事としては、トイレの手摺りが一番多いのですが、例えば介護保険を使って改修工事をする場合、便座から立ち上がる時に、32ミリ太さの手摺りを掴んで立ち上がりなさいというのがマニュアルにあります。ところが手摺りを掴めない人がいて、そういう人は手で支えて立ち上がるしかありません。ただ、それについての対処法はマニュアルには載っていないので、現場の対応にかかってきます。やはり、実際に使われる方の状態を見ないと使い勝手の良いものは出来ません。

○高戸 普段、病院で理学療養士さんのリハビリ指導を受けている方は、ケアマネージャさんや理学療養士さんに立ち会って貰うとさらに良いですね。僕自身、去年事故にあって、最初の2ヶ月は寝たきりで、その後2〜3週間は車椅子、その後1ヶ月は松葉杖でとても不自由しました。その時、こんなに家の中での移動は大変なのかと改めて知りました。トイレで用を足す時も便座から立ち上がるのが大変で、本当に手摺りがないとトイレも使えないですからね。

○中條 廊下の手摺りなども、握る高さを確認して取り付けて下さい。高いとぶら下がっちゃうし、低すぎると落っこちてしまいますから。その人の身長に合わせて、きちっと寸法を決めないとダメですね。

―― 浴室はどうですか。手摺を付ける人は増えていますか。

○中條 トイレと同じぐらい増えています。

―― 横須賀周辺は坂が多く、道路から玄関まで階段を上っていかなければいけないので、アプローチのための手摺りが欠かせないという話を聞きましたが、どうですか。

○中條 取り付けるお宅は多いですね。たしか、門から玄関までの、いわゆるアプローチまわりの手摺りにも住宅改修のための介護保険がおりるはずです。

―― 手摺りというと見た目がちょっとね。デザインは選べますか。

○中條 最近は素材も豊富で、種類が増えているので随分助かっています。以前はステンレスの手摺りしかありませんでしたが、今は木目調もあります。環境に合わせてデザインを選べるようになりました。

―― そういう意味で、デザイン性や機能性について、もう少し提案が欲しいですね。

○中條 くねくねした手摺りって知っていますか? 形状が波打っている手摺りで外国の製品ですが、それがとても使いやすくて、凄く売れているんです。ところが、形がくねくねしているから、一般住宅に取り付けるとふざけた感じに見えて使えない。でも、とても機能的です。

―― 中にはそういうデザインが面白いという方もいますよ。掴みやすいですか。

○中條 掴みやすいです。例えば階段の手摺りに使うと、上る時もラクで、下る時もラクです。握った時の掴み加減がいいと皆さん言います。やはり、機能性とデザイン性を兼ね備え、一般住宅にも使えるものとなると、まだまだ開発の余地があると思います。

バリアを取り除いて老化にブレーキ

――  最近は浴室といえばユニットバスですが、人気のポイントは何ですか。

○中條 僕は、ユニットバスがバリアフリータイプになったというのは、画期的な事だと思います。冬場はヒートショックが少ないのもいい。タイル貼りの浴室は寒いですから。

―― 三浦半島でも冬は寒いですか?

○高戸 寒いです。ですから、高齢の方ほどお風呂場をユニットバスに変えたら、お風呂に入るのが楽しくなったと言われる方が多いですね。お風呂に限らず、リフォームをしたことで、お客様が思い描いた通りの暮らしになったとか、それ以上のものが得られたといった感想を持って頂ければ、家の中でも積極的に身体を動かすようになるかもしれませんし、それによって身体の衰えるスピードも遅くなるかもしれません。ちょっと精神面的な話になりますが。

○中條 確かに、高戸さんが言うように、自分の家で快適に末永く過ごせるというのがリフォームの一番の目的ですからね。

―― つまり、家の中に障害が少なくなって、自分で出来ることが増えれば、心も身体も元気になるという訳ですね。

○中條 お風呂だけでなく、家の中全体を暖かくすると、身体を動かすことがおっくうでなくなりますから、もっと元気になると思いますよ。今リフォーム時期に来ている住宅というのは、30年、40年前の建物ですから、断熱材の入っていない家が多いと思うのです。二重サッシにして窓の熱損失を無くすだけでも随分違うはずです。

―― 何だか、お話を聞いている私まで元気になった気分がします。今日はどうも、ありがとうございました。



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